単気筒、なめてました!
690DUKE R 試乗インプレッション第1回 by Tsutomu Matsui


のっけから軽いタイトル、と言うなかれ。これは2008年早春、スペイン南部で行われたKTM690DUKE、690SMC、そして690ENDUROのメディア試乗会に参加したときの偽らざる印象だ。
この試乗会に参加する数ヵ月前、モトナビ誌の年末号恒例のランキング企画「ザ・ベスト10」の取材で一足先にデビューをしていたKTM690SMに富士スピードウエイのショートコースで乗った時のこと。そのあまりに洗練されたハンドリングとエンジンフィールに驚いていた。個人的に先代LC4エンジンを積んだKTM640AEDVENTURE Rを数年間ガレージに迎え入れた経験を持つ私にとって、新型は驚きの連続だった。刺激的な音とレスポンスでエンジンを掛けただけで心を揺さぶる先代の LC4は、傍目にはワイルドだが、乗ると実にコントロールしやすく、魅惑的なエンジンだった。反面、バランサーがついているのに、タンクやステップ、グリップあたりをブルブル揺さぶる振動には正直「なんとかならないものか」と思っていたものだ。
しかし新型の690LC4エンジンは明らかに先代よりもスムーズでパワフル。しかもあの振動がない。良いところは伸ばし、不満だった部分を見事リフォームしている。そして690SMがみせたハンドリングである。フロントフェンダーとライトマスクまでの一体的が高まり、二本のサイレンサーがリアフェンダーの位置まで持ち上げられた独特の意匠。アクの強さで好みは別れる所だが、そのオフ車的スタイルからは想像出来ないほどロードバイク的グッドハンドリングをもっている。これまで乗ったあらゆるモタード系バイクにありがちな軽く切れ込むような乗り味に身構える部分がない。タイトからワイドターンまでサーキットをロードバイクとして走ることを心から楽しめた。

エンジンの真下に備わるステンレス製サイレンサーボックス。690DUKE Rのスタイルキーにもなっている。

エンジンの真下に備わるステンレス製サイレンサーボックス。690DUKE Rのスタイルキーにもなっている。

独特の形状で力強さを主張するスイングアーム。690系でもDUKEのフレームはスイングアームピボット外側からフレームが覆うタイプ。

独特の形状で力強さを主張するスイングアーム。690系でもDUKEのフレームはスイングアームピボット外側からフレームが覆うタイプ。

クロモリ製のフレームは鮮やかなオレンジに塗られている。690LC4エンジンでもっともパワフルな仕様をDUKE Rに搭載する。

クロモリ製のフレームは鮮やかなオレンジに塗られている。690LC4エンジンでもっともパワフルな仕様をDUKE Rに搭載する。

タンク両サイドの意匠部品、スポイラーにデザインされた車名が踊る。

タンク両サイドの意匠部品、スポイラーにデザインされた車名が踊る。

カーボン製のフロントフェンダー、ブラックのブレーキキャリパーなど、精悍さを演出するフロント回りR仕様の専用装備となる。

カーボン製のフロントフェンダー、ブラックのブレーキキャリパーなど、精悍さを演出するフロント回りR仕様の専用装備となる。

ライダーとパッセンジャーに明確な段差を着けたシート。クルージング時にはホールド感がよく、ワインディングロードではアグレッシブに身体を動かせる不思議なシートだった。

ライダーとパッセンジャーに明確な段差を着けたシート。クルージング時にはホールド感がよく、ワインディングロードではアグレッシブに身体を動かせる不思議なシートだった。

オレンジ色のスプリングがRモデルの証。690系モデルはリンクを介してマウントされる。

オレンジ色のスプリングがRモデルの証。690系モデルはリンクを介してマウントされる。

700㏄に迫る単気筒エンジンがレッドラインの引かれた8000回転までよどみなくしかも枯れること無くトルクとパワーを生み出す。乗りこなす楽しさ。その充実度は他に例をみない。

700㏄に迫る単気筒エンジンがレッドラインの引かれた8000回転までよどみなくしかも枯れること無くトルクとパワーを生み出す。乗りこなす楽しさ。その充実度は他に例をみない。

これは後のスペイン取材で解るのだが、新型LC4エンジン搭載の690シリーズは、オフ系のENDUROとSMC、ロード系のSMとDUKEでメインフレームやスイングアームを全く別物として、それぞれの性格に合わせハンドリングもベスト・チューニングが施されていたのである。勿論エンジンの進化も忘れられない。先代LC4がコンペティション用エンジンに端を発し、それをストリート用にアレンジしてきたのに対し、新型LC4は、その開発にダカール用マシンで得た技術を入れながらも、基本はストリートユースメインに開発されたユニットだ。燃料供給をキャブレターからインジェクションに変更し、エンジンのドライバビリティーを司る電子制御の部分、また環境性能をアップデイト(ノイズとエミッションレベルの低減)したにも関わらず、先代よりもより濃いKTMらしさを湛えている。また、6速化されたトランスミッションや、アクセルオフやシフトダウン時など、後輪に強烈なエンジンブレーキが掛かった時スムーズにそれを吸収する「スリッパークラッチ」が標準装備するなど「パワフルだけど乗りやすい」にさらなる磨きが掛かっている。690DUKEも抜群のフットワーク、そして690SMにも増してロードバイクらしい乗り味で僕を魅了した。
正直、これはニュースだった。ついついあの時の驚きを思い出し前置きが長くなったが、2010年モデルに加わった690DUKE Rの乗り味を報告したいと思う。ストロークを4.5mm伸ばしたことで、排気量は653㏄から690㏄へと拡大。名実ともに690となって初の市販LC4 モデル。しかも、2009年から各モデルに配備を開始したRファミリーの一員らしく機能を高めたWPサスペンション、惜しげもなく使われるカーボンパーツ。そして黒/白/オレンジのRファミリーの装束を纏う。詳しくは次回報告するが、結論から言えば僕が過去走らせた単気筒ロードスポーツ史上最高の楽しさだった。嬉しいのはアグレッシブにもジェントルに乗ってもこのDUKE Rが意のままだったこと。690DUKEも相当だと思ったが、これはその上を行くのである!