KTMのスーパーバイク、
RC8を鍛え上げるるもうひとつの「ファクトリー」

ガラス張りで各開発部門の見通しをよくした市販車開発部門同様、あえてパーテーションを設けず、声の通る開発現場となるレース部門。

ガラス張りで各開発部門の見通しをよくした市販車開発部門同様、あえてパーテーションを設けず、声の通る開発現場となるレース部門。

「おい!この部屋でカメラを振り回すとは何事だ」
ワークショップの奥から届いた声の主は、ファクトリーチームが使うパーツを格納し輸送するためのコンテナーのリペアをしているメカニックからでした。工 具ではなく下地用のサーフェイサーのスプレーを片手にニコニコしながらこちらを眺めています。そしてすぐに自分の仕事に没頭します。
「大丈夫。秘密のモノはとっくにドイツの最前線に送ってあるから(笑)。ボクがモデルで必要な時は何時でも声かけてね」
IDMドイツスーパーバイク選手権を戦うレーシングチームの本拠地はドイツにあるものの、開発そのものを行う部署はKTM本社の一角にあるロードレース用ファクトリーの中に置かれているのです。
エンジン工場、WPサスペンション工場、車両組立工場、そして開発部門の建物の奥にまで足を踏み入れました。市販車の先行開発をするその建物の中はさす がに撮影厳禁。ならばREADY TO RACEの本丸、レーシング部門のガレージを是非紹介したい、と願い入れます。そして実現したのがまさしくレースチームの「ファクトリー・ツアー」なので す。案内役を買って出たウルフガング・フェルバーは、1994年にリリースされた620/400DUKEの開発にも深く関わった人で、KTMのストリート モデルに新しい1ページを加えた技術者です。彼はKTM初のスーパーバイク、RC8開発の責任者でもあります。
「そこにあるのはテスト用の車両で、ジェレミー・マクウイリアムズが乗り実りあるフィードバックをくれました。彼は凄い。とにかく彼がリポートする細かな 点がレース用のRC8を前進させるのに大きく役立ったのは勿論、私にとっては市販モデルを進化させるテーマにもなるわけです」(マクウイリアムズが乗った RC8Rのアクラポビッチカラーのレーシングマシンは、今年、国内でも限定発売されたレプリカカラーの元になったバイクです)
「今年、ライバルが新しいスーパーバイクを出してきましたが、RC8は日本製のスーパーバイクを加えた専門誌のライバル比較テストでジャーナリストから高く評価されています」
フェルバーは、2008年に世界に向け発売したRC8、そして2009年にリリースしたRC8Rが着実に浸透しつつあることに満足しながらも、期待値、 開発目標が水平飛行とはならず、常にライダーの要求は右肩上がりであり、同様にライバル達も休む事なく進化し続けている事をよく理解しています。KTMの スーパーバイク、RC8を是非体験して欲しい。フェルバーはそう願っています。エンジンベンチ室から漏れ聞こえるシミュレーションランの音は、Vツインと は思えない高回転での迫力を伝えてきます。もちろん、ベンチ室は防音材に囲まれているのですが。
「ゾクゾクするでしょ?KTMのスーパーバイクは皆さんが最高に楽しめるよう、我々が戦っているのですからね」
ちょっと低い声。鋭い眼光。RC8が可愛くて仕方がないという深い愛を感じさせるフェルバー。なるほど、レース開発の現場と市販車開発の現場、そして生 産の現場が棟続きであるKTM。READY TO RACEのスピリットが肌に伝わるファクトリー・ツアーだったのです。

キャスター付きフレームに載せられたRC8R用レースエンジン。レースに向けて必要な仕様ごとに用意されている様子だった。

キャスター付きフレームに載せられたRC8R用レースエンジン。レースに向けて必要な仕様ごとに用意されている様子だった。

Vツインからはき出されるガスを効率よく排出すためにレイアウトされたエキゾースト。チタンを使ったパイプ+サイレンサーは驚くほど軽い。

Vツインからはき出されるガスを効率よく排出すためにレイアウトされたエキゾースト。チタンを使ったパイプ+サイレンサーは驚くほど軽い。

RC8の育ての親、フルフガング・フェルバー。

RC8の育ての親、フルフガング・フェルバー。

転倒。その苦い思い出は時にチームやマシン造りの教材となる。

転倒。その苦い思い出は時にチームやマシン造りの教材となる。

RC8Rのタンクに着けられたクラッシュパッド。標準の物からカーボン製パッドに変えられていた。陽光がRC8の陰影を浮き彫りにする。

RC8Rのタンクに着けられたクラッシュパッド。標準の物からカーボン製パッドに変えられていた。陽光がRC8の陰影を浮き彫りにする。

先端部までしっかりとローレット加工を施しグリップ感を高めたステップペグ。大切なコントロールパーツだけに妥協はない。

先端部までしっかりとローレット加工を施しグリップ感を高めたステップペグ。大切なコントロールパーツだけに妥協はない。

左右のケースカバーにはカーボン製スキッドプレートが貼り付けられている。排気系の熱で変色したアンダーカウルが生々しい。

左右のケースカバーにはカーボン製スキッドプレートが貼り付けられている。排気系の熱で変色したアンダーカウルが生々しい。