ヒストリック・モデル第9回
1994年 DUKE物語 その1

620LC4エンジンは101mm×76mmのボア×ストロークで排気量608㏄。歴代LC4の数値はちょっぴり背伸びをしている。

620LC4エンジンは101mm×76mmのボア×ストロークで排気量608㏄。歴代LC4の数値はちょっぴり背伸びをしている。

2010年の今日と変わらぬ風景が広がるマッティグホーフェンのメインストリート。DUKE誕生した1994年春の一枚。

2010年の今日と変わらぬ風景が広がるマッティグホーフェンのメインストリート。DUKE誕生した1994年春の一枚。

とにかく軽く造るんだ! 開発を担当した当時31歳だったウォルフガング・フェルバーは、軽さこそアドバンテージと開発チームに説いていた。これぞKTMがオフロードでの技術をロードバイクに見事投下した作品である。

とにかく軽く造るんだ! 開発を担当した当時31歳だったウォルフガング・フェルバーは、軽さこそアドバンテージと開発チームに説いていた。これぞKTMがオフロードでの技術をロードバイクに見事投下した作品である。

φ320mmのディスクローターとブレンボ対向ピストンキャリパー。前輪に120/70R17、後輪に160/60R17と、現在のDUKEと同じサイズのタイヤをフィットさせている。

φ320mmのディスクローターとブレンボ対向ピストンキャリパー。前輪に120/70R17、後輪に160/60R17と、現在のDUKEと同じサイズのタイヤをフィットさせている。

1953年、R100から始まるKTMの市販モデルの歴史をひもとくと、オフロードブランドとして知られるKTMの軸足が常にストリートにあることが解 ります。スクーターやモペッド、そして50㏄から125㏄の軽く、便利でスポーティーなロードバイクを数多くリリースしてきた事もその証明になるでしょ う。その後、オフロードブランドとして進化を続けたKTMは、小排気量のモデルに加え、80年代になるとロータックス製空冷OHC4バルブ単気筒エンジン を載せたビッグシングルエンデューロのストリートモデルを発売します。サスペンションの設定や、ヘッドライト、ウインカーなどの灯火類を公道用にしたモデ ルで、軽く、タフなイメージのエンデューロモデルそのまま。やや重たいイメージだったのは否めませんが、決して実用一点張りではありません。
そんなKTMが現在へと続くビッグシングルストリートモデル造りへの展開の転換期になったのが1994年春のこと。620DUKE/400DUKEをリ リースがその原点といえるのではないでしょうか。搭載されているのは1987年にエンデューロ/モトクロス用に開発されたLC4エンジンに端を発した KTM自社製水冷4ストロークエンジン。その鋭いレスポンスはビッグボア、ショートストロークのエンジンらしい振る舞いを見せ、当時、まだセルフスター ターすら備えないスパルタンな物でした。
一般道を相手にするだけにカウンターバランサーを装着し、振動を低減はしていますが、それでも素性は隠せません。
いわゆる単気筒エンジンのロードバイクのイメージは、低い回転を使ってシフトアップをして、振動とトルク感を楽しみながら、ハートウォーミングな時間を 過ごす……。温故知新的ともいえるような世界観こそ単気筒の魅力、との認識が多かったのが事実です。LC4エンジンは吸排気系ストリート用に絞り、バラン サーを加えてもなお刺激は充分なものだったのです。
KTMの技術者が考えたのは、オフロードバイクがもつ軽さがアスファルトにおいてでも武器にある、というものでした。荒れた舗装、石畳のようなグリップ の悪い路面だとしても元々の車体がコントロールしやすさを重視しているし、エンジンンだって滑りやすい路面でトラクションを駆けるようにしつけられていま す。ならばこの特性を活かし、舗装路用に最適化したらもっと楽しいロードバイクが出来るはず。80年代後半から流行し始めたスーパーモトよりももっと舗装 路よりの一台。
そして生まれたのがKTM620/400DUKEだったのです。(続く)

当時のメディア試乗会で撮影されたデビュー間もない620DUKE。マッティグホーフェン近くの風景に溶け込んでいる。(写真提供:ミスターバイク編集部)

当時のメディア試乗会で撮影されたデビュー間もない620DUKE。マッティグホーフェン近くの風景に溶け込んでいる。(写真提供:ミスターバイク編集部)