DAKAR 2012 レポート──Vol. 4
KTMファクトリー・ラリーチーム、ダカールラリー11連勝達成。
栄光はシリル・デプレの頭上に。マルク・コマ、総合2位でリマに到着。

トアレグ族のターバン姿をモチーフとしたトロフィーを掲げるデプレ。

トアレグ族のターバン姿をモチーフとしたトロフィーを掲げるデプレ。

2012年1月1日、アルゼンチンのマル・デル・プラタをスタートしたダカールラリーは1月15日、ゴール地点のペルーのリマに到着。15日間、9000キロにも及ぶ“世界一過酷なラリー”と呼ばれるダカールラリーは幕を下ろしました。

KTMファクトリーチームは、初日の短いスペシャルステージこそ首位をのがしたものの、それ以降、マルク・コマとシリル・デプレ(共に3度のダカール優勝経験を持つライダー)のいずれかが首位を占める形でラリーを支配しました。そして激戦の末デプレが優勝。コマは総合2位に入りKTMファクトリーチームがワン・ツーフィニッシュを飾りました。
これによりKTMはダカールラリー・モト部門11連覇を達成。上位2人ばかりか、総合10位までに8名のKTMライダー、総合20位まででも15名のKTMライダーが入るという結果を残しました。

ダカール史上希に見る大接戦。通算4度目の栄光を掴んだデプレ、
ステージ13でのトラブルでコマは2位に。

KTMの11連覇──これはダカールラリー史上でも輝かしい結果です。特に直近3年はKTMファクトリーにとっても難しい戦いが強いられてきました。ラリーのエントリーが締め切られた後に変更された車両レギュレーションにより、2010 年のラリーでは690ラリーに性能制限のためのエンジン吸気リストリクターを装着しての戦い、2011年はダカールラリーに初めて450ラリーで挑戦しました。

ビクトリーランを楽しむKTMファクトリーラリーチームのシリル・デプレとルベン・ファリア。2005 年、2007年、2010年、そして2012年と4度のダカールウイナー。

ビクトリーランを楽しむKTMファクトリーラリーチームのシリル・デプレとルベン・ファリア。2005 年、2007年、2010年、そして2012年と4度のダカールウイナー。

そして今年はエンジン交換をすると1回目は15分、2回目45分、3回目90分という累進的に加算されるペナルティーを課す新レギュレーションとなりました。守っていれば勝負にならず、エンジンに負担を掛け過ぎればトラブルの原因となり、ペナルティータイムの加算を覚悟でエンジン交換をするのか、という難しい選択を迫られました。それでも長い間ラリーに学んできたKTMは、この難しい課題に怯むことなく挑戦し、勝利を掴んだのです。

今年もKTMファクトリーチームの戦いは力強いものでした。序盤から続く3度のダカールラリー優勝経験を持つコマとデプレによるマッチレースは、ラリーの後半戦はさらに激しくなりました。
1月11日、ステージ10を終えた段階で、総合1位のシリル・デプレと2位マルク・コマのタイム差はわずかに21秒。ステージ11ではその差が2分22秒に広がるものの、ステージ12ではコマがデプレとのタイム差を逆転。1分35秒差をつけ首位に返り咲きます。そしてペルーに入って3つめとなる大詰めのステージ13。ここでドラマが起こります。

「僕達はダカールで勝ったんだ。コマとの戦いは体力的にも心理的もこれまで経験したどんなラリーよりもタフだった。それでも美しい景色の中を行くダカールは走るほどに心を奪われるし、その魅力は疑う余地のないものだ。自身への挑戦でもあるからね」とデプレは語った。

「僕達はダカールで勝ったんだ。コマとの戦いは体力的にも心理的にもこれまで経験したどんなラリーよりもタフだった。それでも美しい景色の中を行くダカールは走るほどに心を奪われるし、その魅力は疑う余地のないものだ。自身への挑戦でもあるからね」とデプレは語った。

最終日ステージ14の競技区間はわずか29キロ。実質的勝負はこのステージ13までで決するといっても過言ではありません。デプレとのタイム差を広げたいコマ、追い詰めたいデプレ。ステージ12で首位を獲ったコマが注目のスペシャルステージを最初にスタート。砂漠の中に轍はなく、コマにはナビゲーションとライディングの双方に最大限の注意を払う必要がありました。

前日のステージで総合首位をコマに譲ったもののスペシャルステージ4位だったデプレは、4番手スタート。前走者の轍を確認するだけでペースを上げやすいというアドバンテージを生かし、コマに追いつき、彼と一緒にフィニッシュするだけでタイム差を詰められる、という戦略を実践に移しました。これも実力伯仲の2人だからこそ描ける美し過ぎるバトル。

この日、2012年のラリー中2人の間で繰り広げられた5回にわたる首位攻防戦は意外な形で終焉を迎えました。トップを走るコマはステージ序盤で飛ばし過ぎたのか、ギャップで大ジャンプ。着地の衝撃で彼の乗る450ラリーはミッショントラブルを起こしてしまったのです。

雲上に顔を出す美しい火山。砂漠から見る冠雪も南米ダカールの特徴的な風景。

雲上に顔を出す美しい火山。砂漠から見る冠雪も南米ダカールの特徴的な風景。

2006年、2009年、2011年のダカールウイナーであるマルク・コマ。今回は勝利をデプレに譲ったものの、その走りの才能は互角。厳しい戦いを終え、笑顔でヘルメットを外す。

2006年、2009年、2011年のダカールウイナーであるマルク・コマ。今回は勝利をデプレに譲ったものの、その走りの才能は互角。厳しい戦いを終え、笑顔でヘルメットを外す。

「もうビバーグまで戻れないかと思った」
最悪の状況まで脳裏に描きながらコマはペースダウンを余儀なくされました。ステージ13の後半にわずかなミスコースも加わり、コマは13分をロス。ビバーグでは着実に完走し、2位を守るという作戦にシフト。トラブルを解消するため、2度目のエンジン交換をしたことで、ペナルティータイムを加算され、優勝の二文字は遠のいてしまったのです。

45分のペナルティータイム(エンジン交換による)を課せられても、コマは総合2位の地位を守りました。これは3位以下に大きなアドバンテージがあったからであり、KTMの2人が異次元の戦いをしていたという証左でもあります。

2人は、1月14日に行われたステージ13のままデプレが優勝、コマが2位でラリーを終えました。
史上初となる大西洋から太平洋へと大陸を横断するルート、初めてのペルーでの戦い、そして史上希にみる大接戦……。語り尽くせないほどのドラマとともにダカールラリーは終わったのです。

エンデューロ界のスーパースター、ジョニー・オベール。途中からコマのサポート役をこなしながら、ラリーへの高い適応力を見せつけた。

エンデューロ界のスーパースター、ジョニー・オベール。途中からコマのサポート役をこなしながら、ラリーへの高い適応力を見せつけた。

初出場のジョニー・オベールも見事完走。

KTMファクトリーラリーチームでシリル・デプレをサポートしていたルベン・ファリアは総合12位、マルク・コマのサポートをしていたホワン・ペデレロは、ステージ10 で残念ながらリタイヤ。ペデレロのリタイヤ後、コマのサポート役も務めながら走ったのは、ダカールラリー初出場のKTMファクトリー・エンデューロライダー、ジョニー・オベール。彼は市販バージョンの450ラリーレプリカを駆って総合14位でリマのフィニッシュラインに戻ってきました。“ダカールを学ぶ、そして楽しむ”というミッションを完遂。14ステージ中、ステージ8では9位、ステージ11では4位と自今ベストも記録。2度のシングルフィニッシュを果たし、才能を見せつけました。今後もオベールの活動に注目です。

ご声援を心より感謝いたします。