DAKAR 2012 レポート Vol. 3
ペルー入国直前。ダカールに起きたドラマ、ドラマ、ドラマ。

ダカールラリー2012。アルゼンチンのマル・デル・プラタをスタートし、1月8日、チリのコピアポで15日間続くラリー中、唯一の休日を過ごしました。そして再びスタートしたチリでの3つのステージを終えた段階での戦況をお伝えしましょう。

このラリーに4名のファクトリーライダーを送り込んだKTM。中でも注目はダカールラリーで3勝をあげているスペイン人のマルク・コマと、同じくダカール通算3勝のライダー、フランス人のシリル・デプレ。2012年もこの2人によって激しいトップ争いが展開されています。
8日の休息日、コピアポに到着した段階で、総合トップがシリル・デプレ。2位にマルク・コマ。その差は7分48秒でした。

レストデイ後の3ステージを消化。
KTMファクトリーライダー、コマとデプレの差はわずか21秒に!

レストデイ明けのステージ8。ここで予期せぬトラブルが総合トップのシリル・デプレを襲いました。
2日前に主催者が確認走行を行った段階では無かった泥沼が、レース当日コース場に出現。まるで平坦な道のように見える巨大なぬかるみにトップライダー達がつかまってしまったのです。大地を形成する沈殿土が水分を含み、まるで粘度の高いチョコディップのように、バイクごとライダーを飲み込んでしまいました。なんと長身のデプレの膝上まで埋まるような深さの中にバイクが突き刺さりました。

コマの僚友であり最大のライバル、シリル・デプレ。

コマの僚友であり最大のライバル、シリル・デプレ。

文字通り泥だらけになりながら脱出を試みるデプレ。埋まった足を抜くことさえ難しい状況の中から17分以上を費やすことに。これでそれまで築いたリードをはき出したばかりか、この結果総合2位に転落しました。
477キロと長いスペシャルステージを終えた段階で、今大会としては4度目、ダカールラリー通算20度目のステージ優勝を果たしたマルク・コマが、9分32秒差で暫定トップの座につきました。

ところが、シリル・デプレを含む7台のライダーがはまった泥を見た後続ライダーたちは容易にそれを迂回することが出来たこと、また2日前のルート事前確認では無かった泥沼(もちろん、ルートブックにコーションマークの記載などもありません)の出現を考慮し、主催者は7名の競技区間タイムの減算を決定。これにより総合1位は代わらないものの、2位に1分26秒差でシリル・デプレというリザルトが発表されたのです。

この日、海抜3000メートルまで駆け上がったライダー達は、太平洋岸のアントファガスタへと移動。リエゾン区間を合わせ722キロの長い1日を消化していきました。

続くステージ9。アントファガスタからイケキへと至る565キロのステージに戦い場は移りました。途中舗装路のニュートラルゾーンを挟んで556キロに及ぶスペシャルステージで、シリル・デプレは昨日のうっぷんを晴らすような快走を見せました。

2012年ダカールラリーの勝利を目指すマルク・コマ。

2012年ダカールラリーの勝利を目指すマルク・コマ。

スペシャルステージ前半、ふるいにかけきめ細かくしたような土が(それはまるで小麦粉としか表現できないほどです)埃になって舞い上がるフェシフェシがルート上のあちこちに点在し、前走車がいればダストも強烈。しかも、このステージはスピードも問われる難しさ。さらに後半部分は難しいナビゲーションステージで冒険ライダー達に罠を仕掛けたのです。
イケキへのフィニッシュ手前には、以前にも使われた急斜面を海まで下るダイナミックなルートが設定されていました。

ステージ9でステージウインを決めたのはデプレでした。今大会3度目の区間優勝を遂げ、マルク・コマとのタイム差を逆転。2分28秒差で総合1位に返り咲きました。
すでに総合3位、エルダー・ロドリゲスとは59分もの差が開いている中で、KTMライダー2人の戦いはまさに一分一秒を争う展開に。

通算4勝目を目指すシリル・デプレの戦いは続く。

通算4勝目を目指すシリル・デプレの戦いは続く。

「首位に戻ってこられたね。今日は簡単ではなかったけど、とても満足している。とてもコンペティブだったしね」
とデプレ。

「今日の長いスペシャルステージが難しくなるのは解っていたよ。沢山のナビゲーションをする必要があった。砂漠の罠にはまる訳にはいかないからね。シリルは最大のライバルで、ラリー中常に競っている。でもそれが面白いんだ。スポーツだからね!」
コマも2人のマッチレースを楽しんでいる様子。

そしてアントファガスタからアリカへと至るステージ10。このスペシャルステージでトップタイムをたたき出したのは、スペイン人ライダー、ホワン・バレッダでした。2位に1分32秒差でコマ、3位に3分39秒差でデプレが続きました。

総合ではKTMファクトリーライダーのシリル・デプレが1位を辛くも維持したものの、マルク・コマとの差はわずか21秒(!)。
3位はヤマハのエルダー・ロドリゲスが45分56秒差なので、いかにKTMの2人が僅差でバトルをしているかが解ります。

コマとデプレ──KTMファクトリーラリーチームの2人が今年もドラマを牽引している。

コマとデプレ──KTMファクトリーラリーチームの2人が今年もドラマを牽引している。

この日のスペシャルステージは全長377キロ。競技ステージは砂丘の上からスタートし、猛烈な埃を立てるばかりか、バイクの駆動力すら奪い、中に潜んだ轍でバイクを弄ぶフェシフェシが点在するイヤらしいルート。このステージにもナビゲーショントラップが仕掛けられ、デプレとコマも多少のロスを余儀なくされました。それでも2人は自身4度目のダカール制覇とKTMファクトリーチームによる11回目のダカール制覇に向け戦い続けます。

この僅差の戦いが南米開催4度目に初めて足を踏み入れるペルーに入っても続くことは間違いありません。同じチーム、同じバイク、同じ技量のライダー……。勝負が2人を分かつ瞬間は、それでも必ず訪れるのです。

スペシャルステージの順位は日々変動したとしても、どちらかがライバルの埃の中でフィニッシュをし続けるような僅差の戦いが続くのであれば、現状のように秒単位を争うような戦いはまだ続くことになるのは間違いありません。
ラリーはペルーに決戦の場を移します。チームは次のマラソンステージに備え、エンジンもスペアに交換し、万全を期しています。

ラリーの行方はもうすぐ決しようとしているのです。