DAKAR 2012レポート Vol. 2
KTMファクトリーライダー、
ダカールラリー11連覇に向け、順調に前半戦を折り返す。

ステージ3から首位の座を守るシリル・デプレ。慎重かつ安定した速さが持ち味。350フリーライドの仕掛け人でもあり、トライアル、エンデューロ、ラリーはもちろん、エルズベルグロデオでの優勝経験も持つ鉄人ライダー。

ステージ3から首位を守るシリル・デプレ。慎重かつ安定した速さが持ち味。350フリーライドの仕掛け人でもあり、トライアル、エンデューロ、ラリーはもちろん、エルズベルグロデオでの優勝経験も持つ鉄人ライダー。

真夏の南半球アルゼンチン、チリ、ペルーを舞台にスタートを切ったダカールラリー2012。ペルーのリマに向けて進む世界一過酷で冒険に満ちたラリーは連日、様々なドラマを生みながら進んでいます。
1月1日にアルゼンチンのマル・デル・プラタをスタートしたラリーは、1月8日、チリ、アタカマ州の州都、コピアポ(炭鉱の落盤事故からの救出劇で知られているあの町です)でラリー中唯一の休息日を迎えています。

熱狂的なファンに見送られ、マル・デル・プラタのポデュームを離れた178台のバイクは、道半ばにして128台までその数を減らし、レースの過酷さを物語っています。
競技区間のスペシャルステージと、移動のリエゾンを加えたラリーの走行距離は、1日目の820キロという移動を最長に、2日782キロ、3日561キロ、4日750キロ、5日416キロ、6日641キロ(ステージキャンセルのため、距離は変更になりました)、7日573キロと、総走行距離は早くも4543キロを数えました。

KTMエンデューロチームのファクトリーライダー、ジョニー・オベールも元気に走行を続けている。今回はカスタマー仕様のバイクで初ダカールを走っている。8日時点で総合23位。

KTMエンデューロチームのファクトリーライダー、ジョニー・オベールも元気に走行を続けている。今回はカスタマー仕様のバイクで初ダカールを走っている。

途中、5日のスペシャルステージが前日に降った雨の影響で265キロから185キロに短縮されたほか、翌6日、アンデス山脈を越え太平洋側に抜ける峠エル・パソ・デ・サン・フランシスコ(海抜4700メートル)周辺も前日夜に降り続いた雨が雪(!)に変わり、峠付近を冬景色へと変貌。チリ政府もこの峠を通行止めにしました。ダカールラリーの主催者ASOもその路面状況で競技は安全上難しいと判断。前夜ビバーグ地でステージのキャンセルをアナウンス。一部のルート変更を行いました。

連日気温40度を超す猛暑のなか走行を続けてきたライダー達もこのニュースには驚いたはず。しかし、ラリーは山脈を越えて移動することに変わりはなく、暑いジャケット、冬季用のグローブをして移動となったことはいうまでもありません。

最大のライバルがチームメイト。
KTMファクトリーラリーチームのトップ争い。

こんな厳しいラリーの中、トップ争いをしているのはKTMファクトリーラリーチームの2人。昨年のダカールラリーの覇者、ゼッケン1番マルク・コマ、そしてゼッケン2番シリル・デプレです。ステージ7を終えた段階で、6つ行われたスペシャルステージをマルク・コマが3回、シリル・デプレが2回と計5回も制する活躍ぶり。

後半戦もシリル・デプレとともにダカールラリー優勝を目指すコマ。

後半戦もシリル・デプレとともにダカールラリー優勝を目指すコマ。

総合でもシリル・デプレが18時間12分38秒(スペシャルステージの合計タイム)で1位、マルク・コマがデプレと7分48秒差で2位につけています。すでに3位エルダー・ロドリゲス(ヤマハ)に49分39秒という差をつけているデプレ。KTMファクトリーライダーの2人は、過去6年間のダカールラリーで3度の優勝を分け合ってきた最強ライバルにしてチームメイトという関係で、2012年のダカールラリーでも、それぞれが4度目のダカール優勝と、KTMファクトリーチームによる11年連続ダカールラリー優勝という前人未踏の記録に向け戦っているのです。

前半戦のキーとなったのはステージ3のスペシャルステージでした。ステージ2のスペシャルでトップタイムを出したマルク・コマはその日1番手でスペシャルステージを走り始めます。前日2位のシリル・デプレはコマを追走する形です。
2人はこのスペシャルステージでシーソーゲームを演じました。ウエイポイント1の段階でデプレがコマを20秒先行すれば、ウエイポイント2ではコマが14秒差でライバルの鼻先を押さえ込みます。270キロを走行するこの日のスペシャルステージの中盤を過ぎた162キロ地点に置かれたウエイポイント3で2人の差はわずか3秒差。

(写真左)シリル・デプレのサポートライダー、ルベン・ファリア。総合で現在15位を維持。(写真右)マルク・コマのサポートライダー、ホワン・ペデレロ。現在総合10位。

(写真左)シリル・デプレのサポートライダー、ルベン・ファリア。総合で現在15位を維持。(写真右)マルク・コマのサポートライダー、ホワン・ペデレロ。現在総合10位。

その後、コマはこのステージで唯一最大のミスを犯してしまいます。先行したコマが間違った轍をたどり往復12キロのロス。この間にデプレはステージ1位でフィニッシュ。コマとの間に13分4秒の差を築き、総合でも1分18秒あったトップコマとの差を逆に10分12秒に広げ、トップにおどりでます。
しかし、シリル・デプレもこの日は盤石とは言えない状態でした。スタート直後はペースを思うように上げられず、スペシャルステージの60キロ地点ではデジタルコンパスが機能しなくなり、ナビゲーションに大きな影響が出ました。また、大きなギャップで指を痛めるなど、全てが順調とは言えない状況でした。しかしステージ最後の区間、誰の轍もないルートを走ることになったデプレ。まさか自分がステージウイナーとは、と謙遜しながらもトップに躍り出た事を素直に喜びます。

KTMファクトリーチームのダカールラリー10連覇(2001年から2011年まで)の立役者の1人であり、3勝を稼ぎ出しているマルク・コマ。爆発的なスピードを発揮するスペシャリスト。

KTMファクトリーチームのダカールラリー10連覇(2001年から2011年まで)の立役者の1人であり、3勝を稼ぎ出しているマルク・コマ。爆発的なスピードを発揮するスペシャリスト。

翌日のステージ4は326 キロのスペシャルステージで、ルートを示したロールチャートに400項目もの分岐、注意点、方位などが記されていたほど複雑なナビゲーションステージでした。デプレは築いたタイム差を無駄にしないために、集中力を高め、時にライバルを先行させるなど神経戦も巧く織り交ぜつつ走り続けます。その後もステージ3以来トップの座を8日の安息日まで維持しラリーを折り返すことに。

マルク・コマはステージ7を終えて語りました。
「レストデイの前日が厳しいことはいつものことだね。今日も例外じゃなく、息苦しいほどの気温の中、柔らかい砂丘を越えてきた。その中、攻め続けてシリルとの差を2分縮めたんだ。もちろん、まだ僕にとって充分じゃないけれど。今日僕が2分差をつければ、きっと次のステージではシリルがそれを取り返すだろう。まるで決まり事のようにね。
でも、まだゴールのリマは遠いし、何が起こるか分からない。チームのことを考えれば、今KTMファクトリーチームが1位と2位に居るということ。そして僕も優勝を狙える2位だ。ラリーの中盤でこの状態、しかも順調だし、KTM以外のライバルには40分以上の差をつけている。これはとてもいいことだね」

リエゾンを走るデプレとファリア。キャンセルになったステージ6の峠越えでは最低気温が-8度になったこともあったとか。ライダーは酷暑と酷寒の中を1日で行き来することに。

リエゾンを走るデプレとファリア。キャンセルになったステージ6の峠越えでは最低気温がマイナス8度になった。酷暑と酷寒の中を1日で行き来することに。

コピアポのビバーグで1日の休養をとる中、KTMラリーチームのマネージャー、アレックス・ドリンガーは、2台のKTM 450ラリーのエンジンをスペアエンジンに交換しないことを発表しました。今年からレギュレーションが変更になり、1度目のエンジン交換は15分、2度目は45分、3度目は120分というペナルティータイムが加算される事になったからです。

1月8日の安息日を挟み、10日早朝からラリーは再開、ペルーのリマを目指し移動を開始します。しかも後半戦は前半戦のそれをも上回る厳しいステージが用意されています。

9日・リエゾン245キロ+スペシャルステージ477キロ、計722キロ。
10日・リエゾン9キロ+スペシャルステージ556キロ、計565キロ。
11日・リエゾン317キロ+スペシャルステージ377キロ、計694キロ。
12日・リエゾン171キロ+スペシャルステージ534キロ、計705キロ。
13日・リエゾン259キロ+スペシャルステージ245キロ、計504キロ。
14日・リエゾン100キロ+スペシャルステージ275キロ、計375キロ。
最終15日・リエゾン254キロ+スペシャルステージ29キロ、計283キロ。

多くのプライベーターから支持されているKTM。ゼッケン67はステージ7までで現在総合53位につけているモハメッド・バロッシ。UAEのライダーだ。

多くのプライベーターから支持されているKTM。ゼッケン67はステージ7までで現在総合53位につけているモハメッド・バロッシ。UAEのライダーだ。

このように競技区間、移動距離とも長いステージが設定されています。中でも、11日、12日のビバーグではメカニックなどのチームスタッフからマシンのメンテナンス、サービスを受けられないマラソンステージが設定。ライダー達はトラブルやメンテナンスに限られた資材、工具で対応することが求められるのはもちろん、タイヤのライフも考慮したライディングなど、戦略的な作戦も求められるのです。

ほかにも、13日以降のルートには北アフリカを舞台に行われていたダカール時代にいつもドラマを生んでいたモーリタニアの砂漠のように、難易度の高い砂丘地帯がルートに選ばれているなど、ナビゲーション能力、テクニック、そしてマシンの耐久性など、ライダーの冒険力が問われるダカールらしい展開が待ち受けています。

リマにゴールするまでラリーから目が離せません。デイリーダカールニュース、リザルトはKTMジャパンのファンページやツイッターでもフォローしています。ダカールラリー後半戦もKTMファクトリーチームにご声援よろしくお願いします。