バハ1000チャレンジ──松井 勉リポート
350 XCF-Wをバハ仕様にモディファイ。

バハ仕様にモディファイした350XCF-W。Photo by Shogo Motobayashi

バハ仕様にモディファイした350 XCF-W。Photo by Shogo Motobayashi

まずはなぜバハ1000にKTM 350 EXC-Fで行こう! となったことからお話したい。
理由は簡単。メディア向け試乗会でオールニューとなったKTMの2012年モデルに乗り、その走りやすさ、楽しさ、そして自分が持っているテクニックを知らぬ間に引き出してくれるパッケージにいたく感動したからだ。

意のままの250 EXC-F、迫力の中に乗りこなす歓びのある500 EXC-F。その中間にあって450クラスと250クラスの魅力を併せ持つ350 EXC-F。このバイクはボクの取材歴の中でもとびっきりだった。そして「これでバハを走ったら楽しいだろうな」と、行く行かない以前にそんな妄想が先走りしていた事を告白しておこう。

そしてもう一つ。今回、バハに行こう、と誘ってくれた作家の戸井十月さんから、バイクはなにがいい? と相談され、二つ返事で「350 EXC-Fですね」と答えていたから、というのもある。

あのとき、多くのジャーナリストと試乗後の印象を話したが、ボクが感じたようにほとんどの人がこのバイクに対し好感を持っていた。
だれもが楽しめるバイク。乗ると嬉しくなるバイク。これは間違いのないプロダクトだ。

「向こう5年間、世界一であり続けるためのモデルチェンジをした」とアナウンスされたが、良いバイクは楽しい、だから挑戦したくなるし、アクセルも開け続けたい気持ちになる。高性能だけど手強いバイクじゃそうはいかない。ボク流解釈としてKTMが掲げる”READY TO RACE”の根底にあるのはまさにそれだ、と思う。

(写真左)夜間用ヘッドライトはBaja Designs製8インチHIDライトをチョイス。フロントフォークにホースバンドで取りつけるアタッチメントに、ライトフレームを差し込むように取りつけ、βピンを差し入れて固定する。この取りつけアタッチメントをフロントフォークアウターに取りつけると、ノーマルライトマスクを固定するラバーバンドの長さが足りなくなるため、今回は夕方になると取りつける作業をした。ライトレンジにはポリカーボネイトのレンズカバーが付属。飛び石などから効率的にライトレンズを守ってくれる。ライト本体とスイッチを含むハーネスを購入。夜間走行をしたライダーからは、ドライビングライト的な遠くへ光を飛ばす配光で、フラットな路面は上々。ただし、ギャップが深い所ではライトのビームがピッチングするため、理想を言えば2灯ライトが欲しい、との声もあった。ノーマルヘッドライトの取り外し、HIDライトの取り付けまでの作業時間は3分ほど。ライダーはその間に情報を交換していた。(写真右)樹脂のナックルガードの内側に金属製のブレースが入ったハンドガードを装着。走行距離が長く移動速度が速いバハ1000。サンドの轍に乗って走る場面が多く、ラインを外せない場所にトゲだらけのブッシュが飛び出していることも多い。文字通りライダーはハンドガードを枝にぶち当てて走ることになる。また、転倒時のタフネスも考慮。実際、転倒でのダメージを効果的に低減してくれた。松井が転倒した時のみ、クラッチレバーの先端2センチほどが損傷したが、マスターシリンダーやそのレバーホルダー部にダメージが及ぶことは無かった。

(写真左)夜間用ヘッドライトはBaja Designs製8インチHIDライトをチョイス。フロントフォークにホースバンドで取りつけるアタッチメントに、ライトフレームを差し込むように取りつけ、βピンを差し入れて固定する。ライトレンズにはポリカーボネイトのレンズカバーが付属。飛び石などから効率的にライトレンズを守ってくれる。ライト本体とスイッチを含むハーネスを購入。夜間走行をしたライダーからは、ドライビングライト的な遠くへ光を飛ばす配光で、フラットな路面は上々。ただし、ギャップが深い所ではライトのビームがピッチングするため、理想を言えば2灯ライトが欲しい、との声もあった。ノーマルヘッドライトの取り外し、HIDライトの取り付けまでの作業時間は3分ほど。(写真右)樹脂のナックルガードの内側に金属製のブレースが入ったハンドガードを装着。走行距離が長く移動速度が速いバハ1000。サンドの轍に乗って走る場面が多く、ラインを外せない場所にトゲだらけのブッシュが飛び出していることも多い。ライダーはハンドガードを枝にぶち当てて走ることになる。また、転倒時のタフネスも考慮。実際、転倒でのダメージを効果的に低減してくれた。松井が転倒した時のみ、クラッチレバーの先端2センチほどが損傷したが、マスターシリンダーやそのレバーホルダー部にダメージが及ぶことは無かった。

だからこそ春から癌治療に専念し、その根治祈念にもう一度バハに挑戦しようとする戸井さんにも350 EXC-Fは最適に思えた。
戸井さんもボクも長らくバハをホンダXRで走ってきた。250、350、400、600などその年によってマシンはいろいろだったが、今はもうXRがない。でも仮にあったとしても、350 EXC-Fを推薦しただろう。だって、楽に走れること、これがロングディスタンスのオフロード耐久レースでどれだけライダーの後ろ盾になってくれるか。

実際、国内での事前テストで350 EXC-Fに乗った戸井さんは、跨がる前のシート高には少々驚いたようだが、跨がればシートは沈むし、病後の体にムチ打つこともなくオフロードコースを周回していた。
戸井さんも最初は「手強いに違いない」「乗り慣れた人には乗りやすくてもツーリングライダーの自分には難しいのではないか」という距離感を持っていたはずだ。でも乗り終わった後にはその思いがグッと変わった。その瞬間、350 EXC-Fでのバハ1000チャレンジが決まった。

これまで、国内で念入りに準備を進め、バイクをアメリカへ送り、そのバイクを税関から引き出してレースに参加してきた。今回はその時間がない。早速アメリカに350 EXC-Fをオーダーする。すると、アメリカで販売されている350 XCF-Wを奨められた。

(写真左)KTMノースアメリカのガレージを訪問したとき、AMAのレース用に仕立てられたファクトリーマシンがワイアリングされていたのを見た。そこでメカニックの手塚が同様に施した。(写真右)POWERPARTSにもOEM採用されているスコットのステアリングダンパー。ハンドル切れ角の領域で効かせるかなどきめ細かく調整が可能。過去の経験から必須と思われたが、今回は速度、路面を問わずダンピングは常に最弱で充分だった。

(写真左)KTMノースアメリカのガレージを訪問したとき、AMAのレース用に仕立てられたファクトリーマシンのリアキャリパーのパッドピンがワイアリングされていたのを見た。そこでメカニックの手塚が同様に施した。(写真右)POWERPARTSにもOEM採用されているスコットのステアリングダンパー。ハンドル切れ角の領域で効かせるかなどきめ細かく調整が可能。過去の経験から必須と思われたが、今回は速度、路面を問わずダンピングは常に最弱で充分だった。

基本的に日本で販売されている350 EXC-FとXCF-Wは性能同等。公道走行に必要なウインカーやラジエター用電動ファンなどの装備がなく、よりシンプルなモデル、ということがその理由だった。実際、ウインカーなどはレースに不要なため、取り外す事になるし、むしろ準備の手間も省けたというもの。
なによりプライベーターにとってKTMが有利な部分は、乗って楽しいだけではない。やっぱりREADY TO RACEのスローガン通り、“金曜日に買って、その週末にレースを楽しめるよう”すべてが揃ったプロダクトである、ということだ。だから今回、ボク達がバハ1000の特徴に合わせて、施したモディファイはPOWERPARTSを中心に最小限だった。

(写真左)POWERPARTSに用意されたこのリアスプロケット、チェーンとの噛み合い部分をスチール、ホイールのハブに固定をするインナー部分をアルミとしたことで、耐久性と軽さを兼ね備ている。350XCF-Wのノーマルリアスプロケットは52T(歯の数)だが、8T少ない44Tをチョイス。フロントドライブスプロケットは13Tのまま。これにより、二次減速比を4.000から3.384へと高速化。トップスピードを伸ばす方向に変更。ハイギアード化はバハ1000用常套手段。ガレ場の峠越えなどでトラアル的な箇所でも1速を使えば充分に乗り越えられた。(写真右)POWERPARTSからチョイスした13リットル入り燃料タンク。ノーマルの半透明で残量が解るタイプの使い勝手も見逃せないが、プレラン中、最長200 キロ、サポートと合流出来ない事を想定し、ビッグタンクに交換。レース中は100 キロ以内にガソリン補給のピットがあるのでノーマルでも充分なこともデータとして解った。さすが純正アクセサリーのPOWERPARTS。燃料ポンプや燃料ラインの取りつけ穴位置、取り回し。フレームへのマウント位置などまるでノーマルのようなフィット感。年式により取りつけ部のボルト類が異なる点があるので注意したい。

(写真左)POWERPARTSに用意されたこのリアスプロケット、チェーンとの噛み合い部分をスチール、ホイールのハブに固定をするインナー部分をアルミとしたことで、耐久性と軽さを兼ね備ている。350 XCF-Wのノーマルリアスプロケットは52T(歯の数)だが、8T少ない44Tをチョイス。フロントドライブスプロケットは13Tのまま。これにより、二次減速比を4.000から3.384へと高速化。トップスピードを伸ばす方向に変更。ハイギアード化はバハ1000用常套手段。ガレ場の峠越えなどでトライアル的な箇所でも1速を使えば充分に乗り越えられた。(写真右)POWERPARTSからチョイスした14リットル入り燃料タンク。ノーマルの半透明で残量が解るタイプの使い勝手も見逃せないが、プレラン中、最長200 キロ、サポートと合流出来ない事を想定し、ビッグタンクに交換。レース中は100 キロ以内にガソリン補給のピットがあるのでノーマルでも充分なこともデータとして解った。さすが純正アクセサリーのPOWERPARTS。燃料ポンプや燃料ラインの取りつけ穴位置、取り回し、フレームへのマウント位置などまるでノーマルのようなフィット感。年式により取りつけ部のボルト類が異なる点があるので注意したい。

1 航続距離を伸ばすためにビッグタンクを装着した。
2 バハ1000ではコースによってかなりの高速巡航を求められるため、ファイナルレシオを変更する。
3 夜間走行に合わせて大光量大型のヘッドライトを用意する。
4 アルミブレース入りのナックルガード、エンジン下部のスキッドプレートなどガード類を固める。
5 サンド路面で楽に走れるようにステアリングダンパーを装着。
6 タイヤをロングライフなピレリ・スコーピオン・ラリーに交換。

(写真左)350XCF-Wのエンジン。フルストックでレースに臨む。低速から中速、そして高速へとどの領域でもトルク感、パワー感があり、不足を感じさせない気持ち良さが印象的。高速化したファイナルレシオもなんのその。ドンドン車速を乗せる様子にはいつも頬が緩んだ。パワフルながら振り回されないその扱いやすさが乗り手にとって大きな疲労軽減になった。(写真右)335mmのサスペンショントラベルを持つリアサスペンション。今回、スプリングを含め全くのストックでバハ1000を走った。ムースレーシング製のイニシャルアジャスターを使用し手早くセッティング変更を行えた。ライダーはそれぞれ63キロ(後田)、72キロ(宮崎)、84キロ(松井)と体重がバラバラだったが、ダンパー、イニシャルプリロードとダンパーの調整のみで簡単にセットアップでき、担当したコースに合わせた好みのサスセットを探す事が簡単だった。

(写真左)350 XCF-Wのエンジン。フルストックでレースに臨む。低速から中速、そして高速へとどの領域でもトルク感、パワー感があり、不足を感じさせない気持ち良さが印象的。高速化したファイナルレシオもなんのその。ドンドン車速を乗せる様子にはいつも頬が緩んだ。パワフルながら振り回されないその扱いやすさが乗り手にとって大きな疲労軽減になった。(写真右)335mmのサスペンショントラベルを持つリアサスペンション。今回、スプリングを含め全くのストックでバハ1000を走った。ムースレーシング製のイニシャルアジャスターを使用し手早くセッティング変更を行えた。ライダーはそれぞれ63キロ(後田)、72キロ(宮崎)、84キロ(松井)と体重がバラバラだったが、イニシャルプリロードとダンパーの調整のみで簡単にセットアップでき、担当したコースに合わせた好みのサスセットを探す事が簡単だった。

1に関してはPOWERPARTSの中からつまり14リッター入りタンクをチョイス。
2は後輪に取りつけるドリブンスプロケットをスタンダードの52T(52個の山がある歯車)から44Tに変更。これもPOWERPARTSにあるアルミ+鉄のハイブリッドタイプをチョイス。距離が長く、サンド路面の多いバハではアルミスプロケットが想定以上に早く摩耗することがある。合わせてドライブチェーンも長さを切って調整した。
3に関してはバハ・デザインズというライトメーカーの市販品HIDランプを選んだ。これはストックのヘッドライトと同じ消費量程度で高輝度のライトだ。HIDなら発電系もストックで行かれる。だから信頼性だって高い。

ロングディスタンスレースに備えタイヤをピレリ・スコーピオン・ラリーに交換。サンド、ロック、そして硬い路面でのグリップバランス、トラクション感、コーナリング性能など、バハ1000においては優秀なタイヤとして活躍。レース後半などで現れた濡れた土の路面でも安心して走ることができるオールラウンダー。

ロングディスタンスレースに備えタイヤをピレリ・スコーピオン・ラリーに交換。サンド、ロック、そして硬い路面でのグリップバランス、トラクション感、コーナリング性能など、バハ1000においては優秀なタイヤとして活躍。レース後半などで現れた濡れた土の路面でも安心して走ることができるオールラウンダー。

4のエンジン下部に取りつけるスキッドプレートもPOWERPARTSをチョイス。
その他、エクストラとしてバッテリーをSHORAI製の物に変更。これは容量アップと軽量化を同時に果たせるためのチョイス。ただし絶対に必要な箇所ではなく、万が一、ガレ場、サンドの路面でスタックしたときなど、セルモーターの使用頻度が多くなったりしてもキックを踏まずに再始動出来るように、というもの。

こうして出来上がったバハ1000用350 EXC-Fでバハ100を走った。

(写真左)今回はストックで走行したサイレンサー。全開でもライダーの耳にほどよいワイルドさに鼓舞される音量で、長時間走行でも音疲れすることがなかった。サポート隊も「静かなのはウチのバイク」とレース中に判別がつくようになった。多くのエントラントはサイレンサーを交換して参加していたので、次回走る時はPOWERPARTSからアクラポビッチにサイレンサーをチョイスしてみたい。(写真右)POWERPARTSからチョイスしたアルミスキッドプレート。前輪が跳ね上げる石、エンジン、フレーム下部がグランドヒットして損傷、引っかかる事を効果的に防いでくれるパーツ。深いウォッシュボードの連続区間で走るタイミングがずれたときもグランドヒットすることがあり、レース後スキッドプレートの下部は想像以上にキズだらけになった。

(写真左)POWERPARTSからチョイスしたアルミスキッドプレート。前輪が跳ね上げる石、エンジン、フレーム下部がグランドヒットして損傷、引っかかる事を効果的に防いでくれるパーツ。深いウォッシュボードの連続区間で走るタイミングがずれたときもグランドヒットすることがあり、レース後スキッドプレートの下部は想像以上にキズだらけになった。(写真右)今回はストックで走行したサイレンサー。全開でもライダーの耳にほどよいワイルドさに鼓舞される音量で、長時間走行でも音疲れすることがなかった。サポート隊も「静かなのはウチのバイク」とレース中に判別がつくようになった。多くのエントラントはサイレンサーを交換して参加していたので、次回走る時はPOWERPARTSからアクラポビッチにサイレンサーをチョイスしてみたい。