戸井十月のバハ1000チャレンジ 第3回
コースの下見を兼ねたプレランでアクシデントが……。

レース本番前にプレランを行う。マシンに馴れ、コースを下見するためだ。

レース本番前にプレランを行う。マシンに馴れ、コースを下見するためだ。

チーム・エルコヨーテは2台の350 XCF-Wを“バハ1000”にエントリーさせる計画です。1台は戸井十月+宮崎雄司組、もう一台に松井 勉+後田繁春組がそれぞれコンビを組み、お互いを助け合いながら1135キロ先にあるフィニッシュを目指すのです。戸井さんとは古い仲間達であり、「ガンを克服してバハを走る」となれば、サポートメンバーも張り合いが出ます。

プレランの初日。レースがスタートするエンセナダから南に移動し、サンフェリーペという町に入りました。この町を拠点としてプレランに出かける計画。宿泊するホテルにはバハ1000に参加するためのプレランにやってきた2輪、4輪のチームが多く滞在し、まるでここがバハのスタート地点かのような賑わいでした。

さあ、プレランに出発、その前に記念撮影。左から手塚正芳(メカニック)、戸井十月(作家&映像ディレクター)、宮崎雄司(カメラマン)、後田繁春(農業)。

さあ、プレランに出発、その前に記念撮影。左から手塚正芳(メカニック)、戸井十月(作家&映像ディレクター)、宮崎雄司(カメラマン)、後田繁春(農業)。

バイクの慣らしを兼ねたプレラン。ライダー達は楽しそうに350 XCF-Wを走らせます。これまでもっと大きな排気量のバイクでバハを走った経験のあるライダーにとって、350ccというエンジンサイズは「ちょっと小ぶりかな」と走る前にはそんな想定をしていました。
しかし、実際に走るとそのトルク感、パワー感は大きなバイクに劣るどころか、軽くコントロールしやすい車体とエンジンが持つ自在感で、バハの荒れ地を軽々と駆け抜けて行きます。

「乗りやすい、疲れない、充分にパワフル」
そんな意見が出ました。
戸井さん自身もプレランを終え印象をこう話していました。
「トレーニングをする時間もなくバハに来たから最初は体力的にきつかった。でもコイツはいいね。ギャップで振られても自然に立ち直っていく感じで全然転びそうな感じがない、というか、転ばせてくれない(笑)。乗るほど良さが解るね」
面白いのは350 XCF-Wに対する印象が、チームメンバーの年齢、身長、体重、走り方、経験など全てバラバラにもかかわらず、ほぼ同じだったこと。どの領域でも走りを楽しめる、とう証しではないでしょうか。

戸井さんも(左)夜間走行に備えヘッドライトを取りつけてプレラン。

戸井さんも(左)夜間走行に備えヘッドライトを取りつけてプレラン。

ところが、そんな戸井さんにハプニングが……。
プレラン中、岩だらけの峠越えルートを走行中、斜めになった岩盤の路面でバランスを崩し左に転倒、左腕を痛めてしまいます。その日のプレランルートは、まだ150キロ以上残っていたものの、続行は難しいと判断。プレランを中断し、サポートクルーと合流することにしました。
「数日して痛みが引けば何とかなるよ」──そう話していた戸井さんですが、その夜、サンフェリーペの医療機関で診察を受けると、左腕上腕部を骨折していることが判明。
ガンを克服し、再びバハ1000に挑戦するためにやって来た戸井さんですが、参戦を中止せざるを得ない状況になってしまいました。

サンフェリーペの病院にて。「折れてますね」──ドクターの一言に戸井さんもがっかり。包帯で患部を固定する。

サンフェリーペの病院にて。「折れてますね」──ドクターのひと言に戸井さんもがっかり。包帯で患部を固定する。

「オレは出られないけれど、3人で完走してよ」
ライダーからチームの名誉監督に就任した戸井さん。そして1台の350 XCF-Wを3人のライダーで走らせる、という新しい戦略にスイッチすることにしました。
正直に言えば、サポートメンバーとしては「戸井さんと完走しよう」という目的がプツンと切れた感覚が否めず、最初は当惑しました。それでも誰もがバハの魅力にとりつかれているだけに、バハ1000のスタートに向けた準備を再構築しながら進めるのでした。(続く)