みなさまの応援ありがとうございました!
──全日本ロードレース選手権、2011年度全戦が終了しました 最終回──

雨のスズカを走るRC8 Rと鈴木大五郎選手。

雨のスズカを走るRC8 Rと鈴木大五郎選手。

決勝の行われる日曜日、天候は急に怪しくなってきました。レース日はさらにスケジュールがタイトですから朝は早く、8時25分からウォームアップ走行が始まります。レース本番を前にした最終確認ですから、我々もフルタンクにして、重たい状態のマシンコンディションを試してもらいつつ、天候を見ながらさらにセットアップを行います。JSBクラスでは、セーフティーカーを入れる訓練も行うなど、25分間という比較的長い時間をウォームアップに与えられていますので、ここも貴重な機会として最終的にどのスプロケットを使って走るのかなどを確認。11時過ぎに始まる、第1レースに臨みます。

ところが、その直前に行われたST600クラスではドライだった路面が、JSBクラスのスタート進行に入ったとたんに雨がポツリポツリと降り始め、怪しくなってきました。選手紹介が終わり、我々クルーがコース退去を命じられたころにはかなり降り始め、ここでスタートディレイが宣告されました。大慌てでピットに戻り、タイヤを交換します。スリックタイヤで出走準備をしていましたが、まずはカットスリックを選択。溝の全くないスリックタイヤをベースに、発熱しやすいように手加工で溝を加えたタイヤです。急遽設けられた5分間のフリー走行で路面状況を確認。走り始めはそれほど濡れている感じでもありませんでしたが、鈴鹿サーキットは東西に長く、コースの部分でコンディションが異なることはよくあります。結局、西コース部分の雨がひどい様子で、天気予報も悪化の方向になっていましたので、ライダーが戻ってすぐに今度はレインタイヤに交換。

僕たちがKTN Racingです!

僕たちがKTM Racingです!

レインタイヤは、水はけが良いようにデザインされた溝付きのタイヤ。タイヤ自体もやわらかく、また冷えた雨の路面でも発熱するように設計されており、かなりひどい雨でもハイパワーのマシンを支える能力があります。溝のないスリックタイヤは一般の草レースなどでは使用が認められていませんが、レインタイヤは逆にほとんどのレースで使用が認められている、それだけ安全性が高いタイヤなのです。全ライダーがレインタイヤを用意し、再びグリッドに並びました。

スタート進行が再開されます。時間が押しているのでライダー紹介はやや端折りぎみ、それでも我々クルーがコース上から退去するころには全員紹介してエンジン始動、ウォームアップラップが始まりました。後方のグリッドから戻るには僕らのピットは遠い。小走りでピットに戻り、たどり着いたころ、ほぼ全車がグリッドに戻ってきました。レッドシグナルが消え、スタート。水しぶきはそれほどきつくありません。大五郎選手は、敢えて集団に飲み込まれるリスクを犯さないよう、確実にスタートしていきました。

雨の中のレース。大五郎選手は慎重に確実にスタート切った。

雨の中のレース。大五郎選手は慎重に確実にスタートを切った。

ピットのモニターで見守る中、トップグループはウェットとは思えないほどのペースで走り始めます。RC8 Rも、毎周のようにタイムをあげ、転倒者も少なからず出るレースを無事に走りきって戻ってきました。レース自体は今年度のチャンピオンが決定されるレースでしたが、KTM Racingとしては、何よりもライダーとマシンが無事に完走して帰ってきてくれたことが最大の喜びでした。

その後、雨はどんどん激しさを増していきます。第2レースの前にはストレートの水しぶきの量が尋常ではなくなってきており、正直なところ僕がライダーだったら走りたくない……というくらいになってきました。もちろん、1ポイントを追い、選手権を争っている場合はまったく別ですが、少なくとも我々KTM Racingでは、ここでリスクを犯して1ポイントを獲得する必要はありません。ただし、第1レースをきっちり走りきって、第2レースのスタートに並ぶ権利は得ているわけですから、スターティンググリッドには着き、その上でコース状況を見ながら危険であれば1周で戻りましょう、という決断をしました。

ライダーはそれでも、ピットウォークのときに声をかけてくださったお客様などが脳裏に浮かび、つい走ってしまうものです。とはいえ、今回はリスクを犯す必要はまったくないレース。僕らはメーカーとして、RC8 Rの姿を見せに来ているのであって、1秒を争い、ポイントを獲得するために来ているのではありません。いくら装備をきちんとしているからといっても、雨そのものがリスクですから、ここで無駄なことはしない、という決定を下しました。大五郎選手は予定通り、少し上がったグリッドから静かにスタートし、1周目の終わりにピットイン。そのまま今シーズンのレースは終了となりました。

せっかくのチャレンジ、最後はスカッと走りたかったのですが、天候がこれでは仕方がありません。でも、マシントラブルなどではなく、目的に従ったリタイヤでしたから、僕らは充実した気分で鈴鹿サーキットを離れることが出来ました。

チビッコファンをとても大事にする大五郎選手。写真撮影やサインにも気軽に応じてくれる。

チビッコファンをとても大事にする大五郎選手。写真撮影やサインにも気軽に応じてくれる。

改めまして、今シーズン応援してくださった皆様、本当にありがとうございました。このオレンジブログでも、フェイスブックやツイッターでも、実はこのロードレース関連が一番反応があった記事になりました。こんなに僕らの走りを楽しみにしてくれているお客様がいる、それが僕らの原動力になりました。

また、本当にノーマルにメーカーオプションのパーツをつけただけの車両でのレース、という当初の狙いは確実に達成することは出来ました。これは、もちろんライダーの実力も相当に大きかったのですが、何よりもベースマシンである1190 RC8 Rの素性のよさと、そのRC8 Rをよくわかっているスタッフが開発したレース部品の出来のよさが、このチャレンジを成功にもちこませてくれたのだと考えています。
RC8/Rのオーナーのみなさま、ぜひ皆様の愛車を本当に誇りに思い、かわいがってあげてください。これだけのポテンシャルをスタンダードの車両の状態で発揮できるのは、国内のメーカーを含めてもまず、ない。そういっていいはずです。何よりも、最先端のレース関係者が口を揃えてすごい、そういってくれる車体なのです。

これをさらにポテンシャルを高めていくようにするべきなのか、それともレースから離れてお客様と共に走る方向に転換させていくべきなのか、僕たちにはまだ答えは見えていません。けれども、今年のチャレンジの成果をお客様には積極的に還元して行く予定です。いくつかのオートバイ専門誌に、鈴木大五郎選手がRC8 Rとともに登場するときは、必ずそのフィードバックを伴っています。このオレンジブログでも紹介できたらと考えていますし、今後のKTMイベントでもぜひお気軽に大五郎選手に声をかけてください。きっと、RC8/Rの世界をさらに広げていくヒントが得られることでしょう。

みなさま、応援ありがとうございました!

みなさま、応援ありがとうございました!

ライディングスクールのような形で、KTMの各モデルや、RC8/Rの楽しみを広げていくような場を、我々としても積極的に提供していく予定です。今年度は、多くのサーキットでKTMのお客様にはお得な料金で参加できるプランを用意しての走行会を10回以上に渡って開催してきました。来年度もぜひこうした遊び場は継続して提供していく予定ですし、さらに充実させていく予定です。ぜひ、お客様からもお声をお寄せいただければ幸いです。

本当にありがとうございました。今後のチャレンジとイベント展開に、ご期待ください。また、今年度のレース参戦にご協力くださいましたダンロップタイヤ様(住友ゴム工業株式会社様、株式会社ダンロップモーターサイクルコーポレーション様)、モトレックス・ルブリカント様(モトレックス、株式会社デイトナ様)、モチュール様(テクノイル・ジャポン株式会社様)には、この場を借りて心より感謝もうしあげます。本当にすばらしい製品で、各社の製品のどれ一つが欠けても成しえなかったチャレンジでした。(了)