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──全日本ロードレース選手権、2011年度全戦が終了しました。 第2回──

鈴鹿最終戦。金曜日、予選に向け練習走行が始まる。

鈴鹿最終戦。金曜日、予選に向け練習走行が始まる。

さて、いよいよ最終戦、鈴鹿サーキットです。今年2回目の鈴鹿サーキット。今回は、時間もなく特に新しいことは何も出来ませんでした。前回のオートポリス戦で投入した新しい燃料タンクに塗装を施したことと、ボディのデカールを2011年モデルと同様に化粧しなおしたことくらい。鈴鹿サーキットはレース距離が長いので、RC8 Rのスタンダードタンクだとレースを走りきることが出来ませんから、大型のタンクを取り付けました。

まずは、練習走行。金曜日は午前と午後それぞれに、レース参加者のための特別走行枠が設けられています。これに参加するために、ライダーの鈴木大五郎さん始め、チームの面々は木曜の夜に集合しました。マシンの状態を確認し、走行に備えます。コンディションは晴れ。大五郎選手は、いつものように他のライダーが先を争うように出て行くのをゆっくりと後ろから見守り、コースに空きが出てから走り出します。さあ、セッションが始まりました。

新品のスリックタイヤをつけた白地にオレンジが輝くRC8 Rが、他の誰とも間違えようのないVツインサウンドを轟かせながら最終コーナーを立ち上がってきます。そのたびに、新鮮なドキドキが全身の毛を総毛立たせるかのように伝わります。速い。バイクが走っている、そんな感じを受けます。タイムもイキナリ好調、前回の鈴鹿戦でマークしたタイムにすぐに迫ります。まだ走り始めたばかり。期待感が高まります。

白地にオレンジが眩しいRC8 Rと鈴木大五郎選手がコースイン。

白地にオレンジが眩しいRC8 Rと鈴木大五郎選手がコースイン。

3周ほど、車両の様子を確認した後に、いったんピットイン。サスペンションのセッティングが始まります。ライダーとメカニックとが、心を通わす瞬間。ライダーの表現を如何に的確に受け止めて解釈し、それを形に表していくのか。メカニックの本当の意味での『腕』が問われる瞬間でもあります。どうやって安心して走りやすいマシンに仕上げていくのか。そんなプロセスが、このセッティングと走りこみの中のたまらない醍醐味になっていきます。何回かのこうしたやり取りを繰り返し、1本目の走行が終了。

午後、依然コンディションは悪くなく、さらに午前中よりも細やかにマシンを詰めていきます。午前中の走行中の感触を聞きながら、走り出したら触れない部分を次の走行時間までに調整。走行中はそうしたマシンの変化をライダーに感じてもらいながら、マシンの変化に対応させるように、足回りの変更を煮詰めます。作業上のトラブルなどがあって時間切れ気味ではありましたが、明日の予選に向けた減速比などの見通しを立て、練習日の走行は終了となりました。マシンをピットに戻し、燃料の計算、新品タイヤへの交換、オイルの交換といった作業を実施、タイヤかすなどで汚れたマシンをきれいに仕上げて、予選を迎える準備を整えました。

車検も金曜日の仕事です。レースバイクは、レギュレーションに合致しているのか、安全に走行できる状態になっているのかを、車検という形で確認し、出走が認められます。音量計測にはじまり、ライダーの装具の確認、車両の状態やワイヤリングの確認、重量の計測などが行われます。RC8 Rはガソリン残量10L程度で181kg。燃料抜きなら174〜5kgくらいということになりますから、カタログ値の半乾燥重量、約182kgからは7〜8kgくらい、軽量化されたことになります。マフラーの交換が大きいのですが、灯火類などの保安部品の取り外しも効いています。車検場では、鈴鹿サーキットの車両検査員の皆さんが、RC8 Rを囲むように見に来てくださいました。めったに見られないマシン、仕事半分興味半分でじっくり見て、口々にかっこいいね! といってくださいます。数え切れないほどのレーシングマシンの検査をしてきた方たちですから、RC8 Rが如何にノーマル然としているのかにもびっくり。ノーマルでも走れるんだ……というところには感心することしきりでした。

大五郎選手がマシンの状態を伝える。それをメカニックが理解し、マシンセッティングを煮詰めていく。

大五郎選手がマシンの状態を伝える。それをメカニックが理解し、マシンセッティングを煮詰めていく。

土曜日。JSBクラスの予選は、ノックアウト形式といって、合計70分間のセッションを3回に分割。最初の40分がQ1といわれる第一セッションで、ここを上位24台で足きりを行い、Q2進出の可否が決まります。Q2ではさらに12台にまで絞り込まれて、Q1で最後のタイムアタック、予選最終順位が決まるという仕組みです。最終戦は全クラスの走行がありますからスケジュールもタイト。JSBクラスは、午後1時過ぎに予選が始まります。午前中は簡単なマシンの再確認と、ピットウォークが主な仕事。僕らが出走する最大の目的のひとつである、ファンサービスの時間です。RC8 Rが走ることで、買ってくださったオーナーの皆様にドキドキを提供したい、他のどんなバイクとも違うデザインのマシンが、個性的なサウンドを響かせている姿を見ていただきたい、そのためのチャレンジですから、力が入ります。大五郎選手も、ライディングのときとは人が違ったかのような優しい笑顔で、小さなお子さんを抱き上げてマシンに座らせてあげて写真を撮ったり、ポスターにサインを加えて手渡したりといったサービスを行いました。

いよいよ予選。走行開始早々、3周目に、大五郎選手が5月の鈴鹿と比べて1秒も早いタイムを記録! 好調な滑り出しです。天気は快晴、午後に入ってやや暑いくらいの状態でコンディションも良く、タイヤのグリップとコースのコンディションが良いうちにタイムを出しておくという作戦が当たりました。Q1は40分ありますから、ライダーによっては途中でタイヤを交換してさらに上のタイムを目指します。予選~決勝で合計3セットのタイヤの使用が認められています(使用するタイヤにはマーキングが施され、インチキが出来ないように管理されています)から、Q1でノックアウトされないためには、ここで新品タイヤを投入して勝ち上がらなくてはなりません。KTM Racingは、大五郎選手が早々にそこそこのタイムを記録しましたから、もう1セットのタイヤは温存してQ2に使うこととし、セッションの残りはマシンの調整に使います。

ピットウォークは、ファンサービスのための大事な時間だ。大五郎選手もポスターにサインしたり、写真撮影に応じたり。レースの時とはまったく違う柔和な笑顔になる。

ピットウォークは、ファンサービスのための大事な時間だ。大五郎選手もポスターにサインしたり、写真撮影に応じたり。レースの時とはまったく違う柔和な笑顔になる。

それにしてもレベルが高い!……今年の第一戦、鈴鹿2&4レースのタイムでは、Q1では完全にノックアウトされてしまいます。コンディションもありますが、シーズンを通して戦ってきたマシンとチームがだんだん戦闘力を上げてきていることと、最終戦はこれまでのレースでポイントを獲得したライダーしか出走できないことが、全体のレベルアップにつながっているのでしょう。それでも、レースを良く知り、マシンをよく理解している大五郎選手がタイミングよくタイムを出し、途中転倒者による赤旗中断などもあってセッションが混乱したことも手伝って、Q1を見事に通過しました。

Q2はわずかな時間しか与えられていません。ここの上位12台の枠には全く届かないことは分かっていますが、明日の決勝、2本のレースがありますから、特に2本目のレースのグリッドを少しでも前に進めるべく、ライダーはマシンにさらに鞭を入れていきます。RC8 Rのトップスピードは270kph弱。十分以上に早いですし、これがノーマルだと思えば恐ろしいほどですが、上位勢の290kphを軽々と超えるようなスピードは全く論外としても、他のどの4気筒勢と比較しても、15kph~20kphは遅いのも事実。それでも、Q1でタイヤを1セットしか使いませんでしたから、Q2も新品タイヤで走り、ややコンディションが悪化してきた中でも確実に14秒台を記録、決勝グリッドを二つほどさらに押し上げることに成功しました。ライダーの力に負うところ大。純粋なレーシングマシンではないRC8 Rをここまで走らせる鈴木大五郎選手は、やはりライダーとしての実力が格段に高いことは間違いありません。

そしていよいよ決勝の日を迎えました。(続く)