New Model Impression 2011 990 SM R
袖ヶ浦フォレストレースウェイで走らせたKTMの魅力 第4回
磨き上げた足周り──思わずヤンチャしたくなる。 By 松井 勉

KTMには、ストリートモデルに“R”の一文字を加えた、より走りの本質に向けてピュアに作りこまれた”R”ファミリーがある。すべてのKTMは、WPサスペンション、高性能なエンジン、ブレンボのブレーキシステム、クロームモリブデン鋼を使ったフレームなど、各部にハイエンドなパーツを標準装備し、カスタマイズの余地がないほどまでに作りこまれているが、Rファミリーにはさらに走りの能力を目的に応じて高めるべく、本来ならオプションとしてチョイスされるような部分までメーカーとして選択するほどまでにこだわりぬいた、ピュア・スポーツ・マシンだ。

この990 SM Rも例外ではない。Rファミリーの特徴であるオレンジ色にパウダーコートされたフレームが全体の大きなアクセントになっているのはもちろん、950 SM、990 SMから受け継いだ水冷V型2気筒のLC8エンジンは、116PS(85Kw)と97Nmを発揮。990 SMシリーズ史上もっともパワフルなスペックとなっている。

さらに、990 SM Rの醍醐味は足周りにある。
まずフロントフォーク。レースで磨きこまれた性能を誇るWP製倒立フォークにはφ48mm径のインナーチューブが奢られているが、SMRでは、チタン・アルミニウム・ニッケル(TiAlN)コーティングという表面処理を施し、摺動抵抗をさらに低減。より良好な接地性と狙い通りの減衰圧特性をいつでも発揮できるように、というランクアップしたパーツを使う。これには、マルケジーニ製アルミ鍛造ホイールが組み合わされ、バネ下重量の軽減による走りの高質化と共に、スペシャルなフロントフォークの能力が十分以上に発揮できるように足元を引き締めている。

これに合わせるようにリア用ショックユニットもグレードを上げている。フロントブレーキには、ブレンボ製のモノブロックタイプの高剛性な削り出しキャリパーを装着。これもバネ下重量の軽減に加え、より右指の感触にリニアなブレーキフィールを実現する装備である。

さらにピレリのスーパースポーツ用ハイグリップタイヤを装着。ハンドリングも旋回重視になり、ワインディングやサーキットでの楽しさを倍加させるパッケージに仕立てられている。
サイズなどの違いはあるが、これはKTMの頂点を極めたRC8 Rと同等のパーツ群であり、990 SM R以外のモデルを買ってこの仕様にカスタムアップしようとしたら、ホイールだけで前後50万円近いエクストラになる。つまり、生まれながらのカスタムバイクという側面も楽しめる。

僕がこのバイクと最初に対面したのは、ポルトガルのポルティマオサーキットとその周辺の一般道でのこと。
あの時は220km/hからフルブレーキングで1速を使いたくなるようなタイトターンに突っ込む、というアグレッシブな走りを堪能したが、それより速度域は低い袖ヶ浦フォレストレースウェイであるが、990SMRが持つ走りの本質に変わりはなく「あの楽しさ」に再び出会うことができた。

KTMファンならパワーは990 SM Tと同じでしょ、とお気づきかもしれない。確かにそう。
車体の姿勢変化が990 SM Rと比較して大きな990 SM Tより、アクセルの開度が少な目の一般道を中心とした使い方では、よりスポーティー且つスピードレンジを高めにあわせたサスペンションチューニングを与えられたSM Rのほうが、エンジン自体の主張は少ないように思える。

だからこそ、990 SM Rでサーキットを全開走行すると、SM Tとの違いがより明確に理解できる。前後のサスペンションは豊かなストロークを作動させながらも、コーナリングGで沈み込み過ぎないし、無駄な姿勢変化をしっかり抑え、特性旋回性能に優れたタイヤとの組み合わせで、高速コーナーからタイトコーナーまで、スーパースポーツを追い回せるように軽々と曲がってみせるのだ。

ポルトガルのハイペースなワインディングで感じたとおり、旋回性が抜群に高いため、コーナーの出口を見ただけで曲がり始め、グッと腰を落とすまでもなく曲がり終わる、という身のこなしはここ袖ヶ浦でも感じた。

コースに解き放つと……。

加速時もしっかりリアにトラクションが掛かるイメージのまま、直線的に速度を乗せていく990 SM R。
SM Tだとパワーバンドに入ったときにフワッとフロントが上がってくるが、SM Rの場合、前後ともリッチに掛かった減衰圧のため、余すことなく直線的に加速する印象だ。

ポジションはKTMのストリートモデルらしいアップライトなもの。車名であるSMRが示すとおり、スーパーモトらしく、マシーンの重心を強く意識したもので、バイクを掌握しやすいポジションだ。速度を出すと、アップライトなぶん、あっという間に息苦しい速度域まで到達する990 SM R。意識して上体を伏せておく必要がある。

コーナーのアプローチもRファミリーらいしい骨のある印象だ。ブレンボらしい、じんわり握り込めるブレーキングの奥にあるしっかりとしたタッチ。しかも指2本で軽く握った液圧を逃さず制動力に変換してくれるキャリパーの恩恵を十分に感じられるように、フロントフォークは無駄なピッチングを許さない。これにより前後タイヤの荷重バランスを自動的に取ってくれるかのように、タイヤは路面を捕らえ続ける。この走りの奥にある動きに“R”という文字を読み取った。

シートはフラットでフォームも硬めのものを採用する。そのため、比較するとヒップの位置が上がりSM Tよりも前傾姿勢が強い印象となる。それだけにライダーが起こす左右への荷重移動も、素早く、余さず旋回性に変換してくれる。
だから高速コーナーからブレーキングしながら回り込むコーナーへのアプローチ、という複雑な場面でも身軽さと乗りやすさを前面に出し、全く苦労もなくラップを重ねることができる。
高性能だけど楽。手強くないから楽しい。楽しいからもっとアクセルを開けられる。ライダーの三段活用的伸ばし方がいかにもKTMらしい。とにかくFUN。面白くてたまらなかった。

ややもするとそんなハードな場面だけが990 SM Rの持ち味と思うかもしれない。だが、こいつのステージはストリートだ。軽くパワフルという特性を生かし、最もハイファッションなストリート・スーパースポーツとして街をアグレッシブに走ることを最も得意とする。
むしろ、そんな元気で活きの良いバイクだからこそ、“R”という名を冠し、ハイエンドなパーツがお洒落なほど決まるこのバイクで、いざオーナーがサーキットに出かけたとしても、新しい発見を出来るように、造り手が秘密の扉を隠してくれたのだ。

990 SM Rに、色濃くREADY TO RACEというスピリットを感じ取ると共に、KTMの新しいスローガン、ARE YOU READY? という言葉が挑発してくる香りを味わえるライディングになった。