2012 New Model Impression 150XC
軽い! そして想像以上のパワーと乗りやさ。By 松井 勉

富士ヶ嶺オフロードで乗った4ストロークモデル以上に、ある意味印象的だったのが150XCだ。オレンジ+黒のKTMカラーのボディをまとっていながら、2012年モデルのニュースを搭載したモデルで、プレーンながら定番のKTMカラーがスキ! という人には訴求力があるはずだ。

この150XC、その第一印象は「軽い」の一言。
4サイクルエンジンを搭載するモトクロッサーとしては、圧倒的にクラス最軽量を誇るKTM 250SXと比較しても、8.2kgも軽量な94.2㎏という車重(125EXC SIXDAYSと比べてもわずか0.2kg増でしかない!)に排気量を上げたエンジン。これは乗る前から気になるスペックである。

跨がってバイクを振ってみても軽い。それもそのはず、実質125クラスの重さしかないのだから。また、2ストロークエンジンだけに、タンクの下に感じる重量感が4ストロークモデルとはやはり違う。搭載されるエンジンは54.0mm×54.0mmのスクエアサイズのボア×ストロークを持つエンデューロマシンのベストセラー、KTM 125EXCに対し、56.0mm×58.4mmのロングストロークとなったもので、排気量は143.6㏄。実は125と20㏄も差がない。

エンジンの始動はキックのみ。アームのカーブや長さが絶妙なキックスターターを踏みおろす。最初、ストロークのボトムの所で足が外れてしまうほど力んでしまった。我ながらちょっと恥ずかしい(笑)。というか、それほど軽くキックが降りることに少々びっくり。冷静になって再度キックを踏むと追いかけるように排気音が聞こえてきた。125の軽い感じよりは太いが、250や300の音圧はない。低回転では125的だが、アクセルをワンと開けると思いの外、逞しい音についうっとりする。
アクセルを開けるとチャンバーを震わせるビーンという音とサイレンサーから吐き出される整った音に聞き惚れる。つい右手を開け閉めしたくなる快音にすでに心が躍っている。

125㏄2ストロークと4ストローク250㏄が同クラス、という事実を考えれば、150だからと舐めてはいけない。そう自分に言い聞かせて走り出す。4ストロークに馴れた体のままクラッチを繋いでもトルクの谷にハマってしまうこともなく、たっぷりとした低速トルクを武器に走り始める。

ヒルクライムで早速全開。途中にあるギャップで車体が浮いたり、岩で後輪のトラクションが抜けたりした後はシフトダウンをしないとエンジンの回転がドロップするものの、トルクバンドを維持する限り加速に陰りはない。それでも回転で駆け上がる感じは2ストロークならでは。
4ストロークのEXCモデルとリアブレーキのディスクローターが異なるせいか、タッチがややシビアに感じた。でもエンジンブレーキが弱めの2ストローク、という事を計算しておかないといけないという基本を忘れていることにも気がつく。

勢いよく丘を登り、下りながら旋回するカーブでも、アクセルオフで簡単に荷重を前に移せる4ストロークとは異なり、ブレーキを軽く当てながら荷重を乗せておいたほうが曲がりやすい。なにより自分という重量物を軽いバイクのどこに置くのか、という動的な前後バランスも4ストロークモデルよりもしっかり意識しないといけない。

しかし、その基本さえ守れば150XCはまさにファンバイク。速度の乗るコーナーからタイトターンまで感じる車重は本当に125クラス並。エンジンにはたった20㏄違い? と思うほどトルクに余裕がある分、パワーバンドの下端でも充分加速する。タイトでレールのような轍のあるカーブを駆け抜ける時、フロントをちょっと持ち上げながらクイっと回ることもコントロールしやすいクラッチとの相性で決まる。もっと長いウッズルートがないのが悔やまれた。

EXCシリーズとの大きな違いといえばPDSサスペンションではなくリンク付きとなるリアサスペンション。今回のコースで大きな差を実感する場面は無かった。強いていえばジャンプ時の姿勢をPDSモデルよりも意識する必要があった、ということぐらいだろうか。それにしても車体が軽いからという部分が大きいのかもしれないし……、正直そのくらいの差異でしかない。
前後のWPサスペンションはその質感、吸収性ともKTMクオリティーであり、しっかりダンピングが効いているのに作動性がよく、手首にガツガツくることがない。上質なサスペンションだ。

ペースを上げてコーナーにできたバンクに車体を押しつけながら走り、150XCのパワーバンドで駆け抜けるのは最高の快感。2ストロークエンジンながら、回転に緻密さがあり、スムーズな回転フィーリングを楽しめる。パワーをかけても突発に盛り上がる事もないし、扱いやすい。さすが2ストロークのアップデイトを続けるメーカーだけのことはある。

馴れてくると、エンジンの低い回転域まで詰まっている低速トルクの存在に気がつく。多少エンジンの回転を落とし過ぎても、操作性に優れたクラッチを使いながら走れば、モワっとした路面をつかむようなトルクを伝えながら走ることができる。そこでのエンジンのフィーリングが逞しすぎずソフト過ぎず、で本当に絶妙。このあたりの特性もKTMを選ぶ理由になると思う。

登録して一般道を走れない分、トランスポーターなどでの移動手段が必要になる150XCだ。だがトランポさえあれば、保険などの経費がいらないというメリットもある。なにより73万5000円という価格はどう考えてもオトク。
すでに走るのはコース、トランスポーターを持っている、という人にとって見逃せない2012年の選択肢と言えるのではないだろうか。