2012 New Model Impression EXC Series
500EXCの「ハイパフォーマンスと乗りやすさ」の融合点、
そのエンジンの作り込みを考察!
エンデューロモデル夏休み集中ゼミ──第2回

前回に続き注目のエンデューロモデル「フルモデルチェンジ」講座、今回のテーマは500EXC。エンデューロワールドチャンピオンシップ=WECにおいて、2004年から始まった排気量500㏄以上の4ストロークエンデューロバイクのクラスがE3カテゴリ−です。

そのE3クラスで、7年連続のタイトルホルダーがKTM。525から530とビッグエンデューロモデルのクラスで強さを誇っています。その後継モデルとして登場したのが500EXC。フレーム、エンジンともにフルモデルチェンジという2012年の大改革を受け、どのように変身したのか。今回もじっくり見ていこうと思います。

E3クラスでの強みをさらに磨くこと。そして活躍するための戦闘力と乗りやすさを追い求めること。
車体サイズ的に250、350EXC-Fと変わるところがない500EXC。コンパクトな2012年フレームに搭載するエンジンも、軽く小型化する必要がありました。何より、軽くすること、小型化することは、運動性や重量バランスなどに効いてきます。その心臓部たるエンジン。250、350がDOHC4バルブなのに対し、500EXCは530系同様OHC4バルブヘッドを採用しています。また呼称こそ530から500へと変わったものの、排気量は510.4㏄とこれまでと共通。
しかし、その細部は大きく変身しているのです。

500EXCを開発する上でテーマとなったのが次のポイントです。
● 徹底的に追求されたエンジンの軽量化とコンパクトネス。
● そして高性能と扱いやすさの追求
● 耐久性、品質など高い信頼性の確保と実績のキャリーオーバー
● メンテナンス性向上、シンプルな構造

上記を踏まえ、クラス最高のパフォーマンスはもちろん、E3クラスのベンチマークであり続けるための高い性能を生み出すために作り込まれています。KTM開発スタッフもこの500EXCの進化ぶりを語るとき「2012年モデルは全てのモデルでフルモデルチェンジを受けています。中でもその効果をもっとも端的に感じられるのが500EXCだと思う」と話したとか。ではその具体的手法をご紹介しましょう。

● エンジンのコンパクト化と軽量化

クランクケースの製法を一新。まず250EXC-F、350EXC-F同様、燃料供給装置にケーヒン製フューエルインジェクションを採用。そして軽量化は徹底して行われました。まずエンジンケース。エンジンケースは砂型から作られていた従来モデルの製法を変更。高密度なアルミ合金素材を用いることで強度を保ちつつ、コンパクト、肉薄化。また、オイルサーキット(潤滑経路)を2系統から1系統へとシンプル化。これらにより2011年モデル比でケースのみで1.8㎏の軽量化を達成しています。

ピストン&コンロッド
エンジンケースの軽量化とともにムービングパーツの大幅な軽量化も実現。より高性能なピストンリングを採用する2012年仕様のピストンは、単体重量で2011年モデル比19%の重量を低減。また、新型の軽量コンロッドの採用によりエンジン回転時に発生する振動慣性を低減。よりスムーズなエンジン回転を実現させているのも特徴です。

☆ちょっとトリビア

500EXCのコンロッドを製造するオーストリアのPankl Racing Systems AGは、レーシングエンジンの設計、パーツ生産、四輪市販車のハイパフォーマンスアフターマーケットパーツや、エンジン設計、航空機用パーツの設計・製造など高い技術力を持つ会社です。自動車産業が盛んな国オーストリアにあってキラリと光る存在なのです。実はボードメンバーにKTM CEOのステファン・ピエラも名を連ねています。

バランサーシャフトの軽量化
500EXCの場合で振動重量を20%削減出来た事により、バランサーシャフトも2011年モデル比500gの軽量化を達成。250EXC-F、350EXC-Fのエンジン同様、ウォーターポンプ、バランサーシャフトを一体化(というより一つの部品に集約、という表現のほうが分かりやすいでしょう)しています。

バルブトレイン
完成度の高いパーツを継続使用し信頼性の高さにも注力。しかしカムチェーンガイドを新設計にしたほか、従来型エンジンが油圧式としていたカムチェーンテンショナーをメカニカル式に変更するなど、最適化を図っています。

燃焼室・シリンダーヘッド
エンジンの特性に大きく影響する吸排気ポート形状を設計変更したほか、燃焼室も新しいデザインを採用。熱のこもる排気ポート周りをより効率的に冷却するため、シリンダーヘッドのウォータージャケット形状も変更。性能とタフネスを高い次元で融合させています。

クラッチ
従来のコイルスプリングからダイヤフラムスプリングに変更したことで新しいクラッチシステムは全体的に幅を6.5mmスリム化。耐久性の向上と軽量化、そしてエンジン全体のコンパクト化にも貢献。クラッチレバーの操作力も低減させています。

オルタネーター
電子制御フューエルインジェクションの採用など要求発電量の増加に伴い、140W(2011年モデル)→196Wへと出力を上げた発電システムを搭載。

こうしてエンジン全体がチームプレイとして小型軽量化に成功。単体重量30.2㎏。小型化の恩恵でオフロードライディングに優位なグランドクリアランスの確保も容易に。さらに、小型化による搭載位置にも自由度が生まれ、より高いハンドリング性能に寄与しています。