準備が肝心。熱中症にもご注意を。でも、また挑戦したくなりました。
──オレンジ隊員1号のJNCC初参戦記 後編──

FUNクラスにエントリーしたオレンジ隊員1号。1周目は、まだまだ元気だったが……。

FUNクラスにエントリーしたオレンジ隊員1号。1周目は、まだまだ元気だったが……。

背中に背負ったキャメルバッグからスポーツドリンクを吸いだして、次の周回に入ります。やっと一周しましたがレースは100分ですから、30分かかる僕なら3周はしなくちゃいけません。もちろん、2周目はわだちも岩も何もかも変わっています。体力も落ちています。まあでも、力の抜き方もなんとなく判ってきました。

息が切れていて、背中のドリンクは上手く飲めませんが、のどをなんとなく潤すことは出来ます。埃は相変わらずひどいので、誰かに抜かれるたびにペースを落としていきますが、まあもともと大したスピードで走っていないのでそれは全く問題なし。でも、だいぶヘロヘロになってきているので、応援団の声は聞こえていてもますます持って応えることが出来ません。が、ここも走りきって3周目。

これまで転倒らしい転倒はしていなかったのですが、それでも1時間を越えて、かなりふらふらになってきました。誰にも見えないところで休もうかなーなんて考えながら、道端でバイクを止めて背中のドリンクをすすります。明らかに肩で息をしているので、もうドリンクもなかなか上手く飲めませんが、何がうれしいって走っていくオレンジのライダーたちがみんな「がんばれー!」「大丈夫?もう少しだよ!」と声をかけてくれるのです。僕がこれまで経験してきたロードレースでは全くありえなかったやさしさと仲間意識。エンデューロの楽しみにさらに新しい喜びが加わっていきます。これはもう止められません。あとすこし、これを走りきればゴールだ。再びセルボタンを押して走り出します。

その先、いくつもある厳しい上りの一箇所で、また例によってスタックしているライダーをよけながら登っているときに、マシンを起こしたところに引っかかってしまい、岩の上に落ちました。ついに手痛い転倒です。まあでもよくここまで持ったよなーと思いながら、バイクを何とか起こして、でも山の中腹からでは登れないので下までおろして登りなおし。これでまたかなり体力を消耗しました。

2012年モデル KTM 250 EXC-F SIXDAYS

2012年モデル KTM 250 EXC-F SIXDAYS(今回レースに使ったモデルとは仕様が異なります)

その後がダメダメで、バイクを自分でも全くコントロールできません。疲れがたまってきていて体が合わせられない上に、転倒したときに結構強く打ったようで左手が痛く、クラッチが握れません。おかげでころころ転倒することが増え、ますます体力が減っていきます。ついに、絶対に登れるぜ……とマシンまかせで登ってきた急な壁のような上りで失敗。ひどい状態になりながら、何とかバイクを起こして坂を登ろうとしますがやっぱり無理で、他の車両が行き過ぎるのを待って、坂を下り、もう一回登りなおします。今度は登れました。上で一息ついていると、スタートラインで並んで声をかけてくれたライダーさんが、「あと一息だよ!」と言ってくれます。勇気付けられて、苦手な急坂を下り、パドック裏のジャンプもクリア。KTMのスタッフが手を振ってくれているのが横目に見えます。後ちょっとだ。そのジャンプ後の上り坂で吹っ飛んでいたライダーを抜き、下り、キャンバーの上り……でまたまた振られて制御できずに僕が今度は見事に吹っ飛びました。今度は落ちたのは草むらの中です。

草むらの中なので怪我はしませんでしたが、バイクを起こすのがたいへん、オマケにそこから登ることが出来ません。何とか引っ張り出して、コース外ですが強引に草むらを降りて、コーステープをくぐってコースに戻ります。ここでミスコース。キャンバーを越えたところに戻ったつもりが、はるか手前に戻ってしまいました。おかげで今まで走ってきた道を、その前にミスって登りそこなった急坂からやり直し。もうカラダはヘロヘロです。

それでも何とかもう一度パドック裏のジャンプを舐めるようにして戻り、もう一回キャンバーで……今度はさっきよりは進みましたがやっぱり吹っ飛び、もっと深い草むらに落ちました。いよいよ息が上がっていてバイクが起こせない。でも何とか起こさなきゃ……でへんなところをつかんでしまってパーツが(ヘッドライトカウルでした)取れ、またバイクが落ちていきます。深みにはまっていっていよいよ起こす体力がないです。まずい。でも、戻らなきゃ、あと少しなんだ。しかし、起こせない。足場も固まらず、バイクを起こしそこなってひっくり返り、コリャ休まなきゃダメだ……とちょっとしゃがみこみます。通過するバイクがどんどん減り、ついにマーシャルが頭の上を気付かずに通過。あーあ、誰も気付いてくれないなー、そりゃそうだよなー、草の中だしなー、こんなところに落ちないよなー。どうしよーかなー。だんだん思考がスローになっていきます。陽はますます強く、熱くてからからでやばいです。うーん、おこせないなー。どうしよー。

自分が立ち上がる元気もなくなってきました。でも、バイクは捨てたくないしなー。人間だけ帰ると負けだなー。なんとかしなきゃなー。でもおこせないなー。なんて状態でふらふらしているときに、「いた!」という声「大丈夫?」という声が。オレンジ軍団が見つけに来てくれたのです。ああ、助かった、でも完走できなかったちくしょー、でもとりあえずお礼言わなきゃ……でももう声がでない。自分で動ける? といわれても返事が出来ない。意識ははっきりしているのですが、反応できません。

助けてくれたオレンジ軍団は、すばらしいチームワークできわめて適切に対応してくれました。動けない僕を担架に積んでそのまま軽トラへ。担架を運ぶ仲間にはその後のレースで優勝を飾った小池田選手もいたのですから、なんとも豪勢なチームでした。大量の氷で静脈に沿って体を冷やしてくれ、岩塩とドリンクをがんがん飲ませてくれて、おまけにチームの道具を運んでくれた石戸谷選手(レースでは6位!)のクルマは冷凍車。ここできっちり冷やしてもらって、何とか自力で立てるようになりました。そのまま念のため救急車で近所の病院に担ぎ込まれ、メディカルチェック。点滴一本打ってもらって完全復活です。いや、熱中症って本当に怖いです。走り出す前から大量に水も飲み、スポーツドリンクも持って走り、塩もたくさん舐めておいたつもりだったんですが、予定外の転倒が重なって一気に体力を消耗してしまったというわけでした。

フィニッシャー達を、シャノーがハイタッチで迎える。

フィニッシャー達を、シャノーがハイタッチで迎える。

熱中症、皆さんも十分にお気をつけください。幸いにして僕は最初から最後まで意識だけはありましたが、体が全く動かなくなりました。息が上がっていたのでまず口が利けなくなり、頭が重たくて動かせなくなり、立ち上がるのがしんどくなり……という感じでした。ですが、一般には意識が途絶えていくとか、頭が痛くて遠のいていくといったことが先にあるようです。まあ僕も、意識があってもそれを表示することが出来ないので、助けてくださった方からは意識もないと思われていたようです。

体が振られる原因となった転倒では、結局骨折していました。左手の親指の第2関節辺りの内側、剥離骨折です。くっつくのに意外に時間がかかりそうですが、固定しておくくらいしかできることがなく、今は一生懸命カルシウムを摂っている最中です。骨折はとにかく……痛いですねぇ。熱中症の状態が引いてきてからはずーっと手が痛くてアイシングしていましたが、やっぱり折れてたかー、という感じでした。おかげで、こうしてオレブロの記事を書くのもなかなかたいへんです。

というわけで、残念ながらオレンジ隊員のJNCC初挑戦はゴールを目の前にしてリタイヤ、仲間に救出されて九死に一生を得る(ちょっと大げさ)という結果になりました。次回? もちろん、また挑戦しますよ〜。まあ、骨がくっついて、ちゃんとトレーニングをして、何よりもオフロードの走り方を教わって……ですかね。でも、これで懲りたかと言われれば、いいえ、ますます面白くなってきた! というのが本音です。僕みたいな全くの素人でも挑戦できるというのもJNCCの面白さだし、それをKTMが全力で支えているってのも最高です。また、へたくそだからこそ最高のマシンに乗って助けてもらうってのが如何に大切なのか、身をもって知りました。上手な人ほど道具を選び、下手な人ほど道具に頼る。結局は最高の道具があってこその遊びですし、道具がなければ始まりません。KTMはその最高の道具なんだと、心の底から言うことができますね。

ですから、お読みくださるみなさまもぜひ、挑戦してみてください。僕が参加させていただいた100分のクラスでも十分以上にチャレンジングですから、3時間クラスを走るトップライダーのすごさが身にしみて判りますが、そのライダーとほとんど同じコースを走る感動も味わえます。事前の下見ツアーで教えていただければ、こりゃ無理! というところもルートを探すことが出来ますし。さあ、初めての皆さん、ぜひ次は僕と一緒に走りませんか? 僕も次こそは……とりあえず完走を目指しますよ〜。でも、もっとカラダを作っていきますけどね。

そして、くれぐれも熱中症には気をつけましょう!