IDMドイツ・スーパーバイク選手権 第5戦
マルティン・バウワー、2位+4位でランキング首位浮上!
KTMファクトリーチーム、地元ザルツブルクを湧かす。

超高速オーバルにシケインを設けたかのようなレイアウトが特徴のザルツブルクリンク。高速、低速それぞれのコーナーに特性が求められる。混戦になっても予選を上回るレースペースを発揮するRC8R。乗りやすさの証明でもあるのです。

超高速オーバルにシケインを設けたかのようなレイアウトが特徴のザルツブルクリンク。高速、低速それぞれのコーナーに合った特性が求められる。混戦になっても予選を上回るレースペースを発揮したRC8R。乗りやすさの証明でもある。

7月1日から3日までIDM国際ドイツスーパーバイク選手権シリーズ第5ラウンドが、オーストリア・ザルツブルクリンクで開催されました。

KTM本社のあるマッティグホーフェンからも、クルマで1時間とかからない場所にあるザルツブルクリンク。それだけに地元KTM応援団(その中にはKTMで働くたくさんのレースファンも含まれていました)が集結。KTMファクトリーライダー達に熱い声援を送りました。


第2ラウンドでのクラッシュで鎖骨骨折し、その手術からの復帰戦となるステファン・ネーベル(INGHART KTMスーパーバイクチーム)も元気な顔を見せ、KTMのホームレースに話題を添えました。

 

(写真左)ステファン・ネーベルのマシンがピットロードに戻り、チームも活気に満ちる。(写真右)ネーベルが超高速バトルへとピットボックスを後にする。

(写真左)ステファン・ネーベルのマシンがピットロードに戻り、チームも活気に満ちる。(写真右)ネーベルが超高速バトルへとピットボックスを後にする。

(写真左)ネーベル──走りは強くクールに。(写真右)ファンとの交流では持ち前のユーモアセンス全開のネーベル(左)とスムルツ(右)。

(写真左)ネーベル──走りは強くクールに。(写真右)ファンとの交流では持ち前のユーモアセンス全開のネーベル(左)とスムルツ(右)。

もちろん、MOTOREX KTMスーパーバイクチームのマルティン・バウワーにとっても、ここザルツブルクリンクはホームレース。気合いが入ります。しかし、前戦、ザクセンリンクラウンドの第2レース開始直後、INGHART KTMスーパーバイクチームのマテジ・スムルツの転倒に巻き込まれる形で転倒した彼は、その時に負ったダメージで、このレースを「本当に走れるのだろうか」と悩みました。

IDMのプレスリリースによれば、あのクラッシュでマルティン・バウワーは、手、膝、靱帯へのダメージのほか軽い脳震盪も起こしていて、わずか10日ほどで迎えるこのラウンドへの参加は危ぶまれていたのです。KTMファクトリーチームも、バウワーの体調を気遣い、セッションごとに次へと進むかどうかの判断を本人に委ね、バックアップ体制を整えてました。

(写真左)高速左を絶妙なテールアウト状態で攻めるバウワー。セッティングも決まった。(写真右)同じコーナーでのスムルツ。4.2キロのザルツブルクリンクの平均速度は190km/hを越える。空気抵抗を減らしスクリーン越しにコースをにらみながらの全開。スムルツも長いブラックマークを残して旋回中!

(写真左)高速左を絶妙なテールアウト状態で攻めるバウワー。セッティングも決まった。(写真右)同じコーナーでのスムルツ。4.2キロのザルツブルクリンクの平均速度は190km/hを越える。空気抵抗を減らしスクリーン越しにコースを睨みながらの全開。スムルツも長いブラックマークを残して旋回中!

しかし、このラウンドが今シーズンの大きなターニングポイントになる事は、バウワー自身が一番知っていました。ザクセンリンクでのレース2で転倒リタイヤという結果に終わったことで、ランキングポイントでCBR1000RRに乗るカール・ムゲリッジに9ポイント、KTMファクトリーの新人、マテジ・スムルツにも1ポイント差で3位に沈んだのです。

シリーズを見据えればここが正念場。ザルツブルクラウンドでポイントさえ稼げば、残す3ラウンド6レースにチャンピオン争いを優位に進めることが出来るばかりか、次戦まで1カ月のインターバルがあり、その間治療とトレーニングに集中することも可能です。

(写真左)MOTOREX KTMスーパーバイクチームのスタッフが走行を終えたバウワーを囲む。マシンの調子よりも、今日は彼のフィジカルコンディションが最も気がかり……。(写真右)右手首に巻かれたテーピングが痛々しいバウワー。しかし静かに出番を待つ。

(写真左)MOTOREX KTMスーパーバイクチームのスタッフが走行を終えたバウワーを囲む。マシンの調子よりも、今日は彼のフィジカルコンディションが最も気がかり……。(写真右)右手首に巻かれたテーピングが痛々しいバウワーが、静かに出番を待つ。

僚友であるINGHART KTMスーパーバイクチームのステファン・ネーベルは第2ラウンドでの負傷欠場が続いたため、今シーズンのIDMチャンピオンへの道は、事実上、閉ざされました。

 

チームのこと、KTMのこと、そして何よりもバウワー自身の事を考えれば怪我をおしても参戦したい理由は山ほどあったのです。

ウイークエンドを支えたドクター。テーピングとアイシング……、ホームレースというお祭り気分の裏舞台で、厳しい局面を乗り越えるために誰もが全力を尽くしていた。

ウイークエンドを支えたドクター。テーピングとアイシング……、ホームレースというお祭り気分の裏舞台で、厳しい局面を乗り越えるために誰もが全力を尽くしていた。

マルティン・バウワーは、2010年シーズン、IDMのチャンピオンに王手をかけた最終戦、レース1優勝、1ポイント差をひっくり返すためにレース2に挑みました。そしてトップ快走中にマシントラブルでストップ。指の間からタイトルがこぼれ落ちる瞬間を見ただけに、様々なプレッシャーをはねのけ、それらを糧にしてこのラウンドに臨んだのです。

しかし、KTMファクトリーにとって、超高速のザルツブルクリンクは諸刃の剣。グリッドを決める一発タイムではパワーに勝る4気筒勢に先行を許す形に。ラップアベレージはポールシッターのフィリップ・アルフェンドルファーで194.514km/h! 前戦ザクセンリンクのポールシッターが1ラップ平均157.095km/hだったことと比較すると、40km/h近くこのトラックは高速なのです。

地元オーストリアのマルティン・バウワーが
レース1&2で魅せてくれた。

怪我の心配をよそにKTMファクトリーチームで最速を記録したのがマルティン・バウワーでした。彼のRC8Rは、トップから0.710差の7位、INGHART KTMスーパーバイクチームのステファン・ネーベルが0.814差で10位。彼のチームメイト、マテジ・スムルツは1.148秒差で16位。予選は僅差でグリッドが変わる大接戦となりました。

(写真左)地元ザルツブルクラウンドだけに、KTMモーターサイクルのデザインをする会社、KISKAのジェラルド・キスカ社長(右から2人目)もグリッドに姿を見せた!キスカさん自身もRC8Rのオーナーだ。(写真右)緊張のスタートの瞬間。

(写真左)地元ザルツブルクラウンドだけに、KTMモーターサイクルのデザインをするKISKA社のジェラルド・キスカ社長(右から2人目)もグリッドに姿を見せた!キスカさん自身もRC8Rのオーナーだ。(写真右)緊張のスタートの瞬間。

そしてレース1。このレースですばらしい活躍をしたのが地元オーストリアのマルティン・バウワー。優勝こそBMWのS1000RRを駆るミハエル・ランセダーに譲ったものの、3位に入ったギスベルト・ヴァン・ギンホーヴェンのS1000RRと0.126秒差という接戦を制し、トップから4.146秒差で2位に滑り込む活躍を見せたのでした。

また、ポイントスタンディングでライバルとなる多くのライダー達よりも前でフィニッシュしたことも大きな収穫でした。

(写真左)そして激戦が始まり……。(写真右)負傷を感じさせない快走を見せるバウワー!

(写真左)激戦が始まり……。(写真右)負傷を感じさせない快走を見せるバウワー!

ステファン・ネーベルは6位(トップから6.644秒差)へとRC8Rを導きました。ネーベル自身もまだ第2ラウンドで負った肩の怪我は完治していないものの、ガッツの走りでザルツブルクリンクに集まった1万人以上の観客を大いに沸かせました。

マテジ・スムルツは15秒269遅れで11位。彼はランキングトップのカール・ムゲリッジ(CBR1000RR)と超僅差バトルを演じ0.048秒差で敗れたものの、超高速トラックでも4気筒勢に一歩も引かないレースペースを見せつけたのです。

そしてレース2──。レース1同様、サーキットに集まったファンは再び興奮に包まれます。オープニングラップを3位で終えたマルティン・バウワーは、その後4位となりながらも、先行する3台のバトルを冷静に見守り、無理することなくトップから1秒差の4位でフィニッシュ。マルティン・バウワーから2秒差でステファン・ネーベルが5位。対照的にマテジ・スムルツのRC8Rはレース2のオープニングでマシントラブルが発生。彼はエンジンのダメージが深刻化する前にピットガレージに戻りました。高速サーキットで万が一エンジンがブローする危険はライダー本人のみならず、路面にオイルを出すなど影響が大きいため、彼の選択は最善でした。

(写真左)しかし、レース終了後……。疲れ切った様子のバウワー。(写真右)レース1でのアワードプレゼンテーションでは、優勝したライダーと右手で握手することすら出来ませんでした。バウワーのプロ魂を見せてもらった!

(写真左)レース終了後……。疲れ切った様子のバウワー。(写真右)レース1でのアワードプレゼンテーションでは、優勝したライダーと右手で握手することすら出来ませんでした。バウワーのプロ魂を見せてもらった!

レース2は残り4ラップの時点で雨のため中断、そのままレース成立。

今回、ハイスピードバトルの場となったザルツブルクリンクで、RC8Rを駆るファクトリーライダーが強さを印象づけました。また、RC8Rがレース1、レース2を通じて、レース中のベストラップが予選タイムを上回る実力も示したのです。4気筒勢の多くが予選タイムよりレースベストが0.1〜1秒ほど及ばない点にも注目です。

また、このラウンドで怪我をおして2位、4位となったマルティン・バウワーは、146までポイントを伸ばし、ランキング首位へと浮上。2位のカール・ムゲリッジに12ポイント、3位のミハエル・ランセダーに17ポイントとリードを広げています。

マテジ・スムルツは119ポイントでランキング5位、怪我から復帰したステファン・ネーベルは47ポイントで13位につけています。

ザルツブルクリンクでの2レースともBMWが制したことで、マニファクチャラーランキングは298ポイントでBMWのものに。KTMは287ポイントで2位に。

3位のホンダ(161ポイント)には大きく水をあけているものの、IDM終盤戦の2ラウンド4レースから目を離せない展開となってきました。引き続き、KTMファクトリーチームへのご声援をよろしくお願いします!!

ザルツブルクラウンドを振り返って。

MOTOREX KTMスーパーバイクチーム マルティン・バウワー

私のレースキャリアの中で最もタフなレースでした。しかし、良いスタートを両レースで切れたことが重要でした。レース1では2位をキープすることに集中しました。レース2が中断となったことはむしろラッキーでした。フィジカル的にそれほどハードだったのです……。

今は体をじっくり休めたいですね。このレースに向けて二人の理学療法士が尽力してくれました。本当に感謝したい。

今回は歯車がかみ合わなかったスムルツ。ランキング上位だけに最終戦まで炎の戦いを期待!

今回は歯車がかみ合わなかったスムルツ。ランキング上位だけに最終戦まで炎の戦いを期待!

 

INGHART KTMスーパーバイクチーム ステファン・ネーベル

とにかく、オーストリアのファンの前で良いレースが出来たことがとてもハッピーです。今回、肩の怪我とギリギリ最後の最後まで相談していた関係で、出場の許可が下りたのはザルツブルクラウンドが始まる3日前でした。確かに完全な状態ではありませんが、チームがすばらしい仕事をしてくれた事と、マルティン・バウワーに賛辞をおくります。特にレース2、私はマルティンの後ろでフィニッシュしましたが、彼がこの高速サーキットで最後まで凄いペースでプッシュし続けられるよう祈っていました。

INGHART KTMスーパーバイクチーム マテジ・スムルツ

正直、私にとってザルツブルクリンクは好きにはなれませんでした。その理由は、第一にフリープラクティスでのクラッシュ……、そしてレース2でのメカトラブル……。この週末には本当に失望しています。ただし今日でザルツブルリンクの週末はおしまいです。次のラウンドも頑張ります。