125 DUKEをデザインした KISKA代表
GERALD KISKAインタビュー
「125 DUKEはモーターサイクルへの招待状です」

1991年以来、KTMのデザインに関わっているのがKISKAです。
ザルツブルグ郊外にスタジオを構えるこの会社は、単にKTM製モーターサイクルの意匠デザインをするだけではありません。

初期のコンセプトワークから企画、そしてデザインをしてクレイモデルの制作というデザインで全体はもちろん、カタログなどのPR戦略などにまで深く関わり、ストリート、オフロードモデルはもちろん、ATV、X-BOWといった四輪のプロダクトまで手がけています。
さらにPOWERPARTSもKTMのエンジニア達と共同で制作することで、見事なまでの統一感とスタイリッシュさを生み出しているのです。
KISKAの創業者であり、インダストリアルデザイナーとしても第一線で活躍するジェラルド・キスカさん。

125 DUKEが誕生するまでの話はもちろん、キスカさん自身とKTMの関係がどのように生まれたのかについてもお話いただきましょう。

エントランスにはKTMのモーターサイクルだけではなく、Kiska社がデザインした多くの製品が展示されている。

エントランスにはKTMのモーターサイクルだけではなく、Kiska社がデザインした多くの製品が展示されている。

オレブロ 現在、KISKAはKTMのモーターサイクルすべてのデザインワークを担っています。そもそもキスカさんご自身がKTMのモーターサイクルのデザインを始めた理由、その接点を教えてください。
ジェラルド・キスカ(以下キスカ) あれは1991年だったと思います。当時デビューを予定していた新型のLC4モデルのデザインコンペが行われ、そこで私と他のデザイナーがアイディアを持ち寄りました。私は4つのプランを提案したと記憶しています。

オレブロ それ以前からKISKAはモーターサイクルのデザインをしていたのでしょうか。
キスカ いいえ。あれはキスカを興してまだ1年目でした。そして最初のクライアントがKTMだったのです。それ以前はモーターサイクルのデザインはしていませんでした。私自身、独立して会社を興す前、4年間ポルシェデザインで主にアクセサリー、時計、そしてサングラスといったものをデザインしていました。

オレブロ とすると、本当はKTMに提案したかったのは、モーターサイクルよりアクセサリー関連だったのでしょうか。
キスカ いえいえ。今もそうですが、私は若いころからモーターサイクルに乗っていました。ですからモーターサイクルをデザインすることに興味があったのです。

幼い頃からKTMが好きだった、と語るジェラルド・キスカ社長。今も、RC8や990アドベンチャーでライディングを楽しんでいる。

幼い頃からKTMが好きだった、と語るジェラルド・キスカ社長。今も、RC8や990アドベンチャーでライディングを楽しんでいる。

オレブロ キスカさんとバイクの出会いを教えて下さい。
キスカ 私が最初にモーターサイクルを手に入れたのは13歳の時でした。もちろん、まだ免許を取れる年齢ではありませんでしたけどね。100㏄のバイクを家の裏山で乗り回していました。ジャンクヤードから買ってきて自分で修理しながら走らせたのです。でも私の父親は「バイクは悪魔だ」という考えだったので、それが知れたら大変です。だから友達の家のガレージに隠していました。
それもあって、私が19歳の時、RD350を買ったのですが、父はとても驚いていました。学生だったので安いポンコツを手に入れたんです。それはひどいダメージを受けたバイクで、まともに仕上げるのにひと夏かかりましたよ。でもそのおかげでモーターサイクルのこと、パーツのほとんどを理解することが出来ました。その後、RD500LC(RZV500)、BMWやドゥカティにも所有しました。KTMがストリートマーケットに出る以前ですね。

オレブロ 今は何に乗っているのですか?
キスカ 今はRC8と990 ADVENTUREに乗っています。年に2,3回ADVENTURE TOURSにも行きます。イタリアやフランスですね。

オレブロ やっぱりご自身がモーターサイクル乗りということは大きなプラスになっているとお考えですか?
キスカ KTMとの仕事が始まってから、ステファン・ピエラ社長は、私をイビザ島に送り込みました。そこにはKTMで250㏄クラスの世界チャンピオンになったハインツ・キニガドナーさんの別荘がありました。私はそこで1週間、キニガードナーの元でトレーニングを受けたのです(笑)。
イビザは1年中オフロードライディングができ、それはサバイバルキャンプでした。うーん、ある意味、悪夢でしたよ(笑)。楽しかったですが、終わったとき体はボロボロでしたよ(笑)。とにかく開けろ、開けろ、でしたから。

オレブロ なるほど……。ブートキャンプだったと! でもその結果、現在もKTMのモーターサイクルはオフロードでもナンバー1を数多く獲得しているわけですね!
キスカ ハハハハハハ……。それはどうでしょう(笑)

Kiska社の正面玄関で撮影することになった。デザイン・スタジオに置いてあった125 DUKEを自らの手で運ぶ。

Kiska社の正面玄関で撮影することになった。デザイン・スタジオに置いてあった125 DUKEを自らの手で運ぶ。

オレブロ ちょうど90年代初期、KTMは破産と再生、そして640 DUKEの誕生で本格的にストリートセグメントに切り込むなど重要な時期でもありました。
キスカ KTMが成長するために、ストリートモデルのマーケットに打って出ることは大切な戦略でした。1994年に最初のDUKEを世に出したことが、KTMにとっての着火点になったことは事実です。その後KTM自身もストリートモデルの開発に力を注いできたことはご存じの通り。
2003年に950ADVENUTREをリリースした後、搭載されていた水冷Vツインエンジン、つまりLC8エンジンを使ったニューモデルを開発するべきだ、と考え990SUPER DUKEへとつながったのです。

オレブロ その後、990SUPER MOTOシリーズなどが加わり、また2003年の東京モーターショーではRC8コンセプトを発表。ロードレース世界選手権MotoGPにエンジンサプライヤーとして参戦しました。また125クラス、250クラスでの活躍は記憶に新しいところです。そして今のKTMにとって、125 DUKEはどのようなことをポイントにデザインされたのでしょうか?
キスカ 125 DUKEのキーとなったのは若い人達にモーターサイクルの楽しさを再確認してもらうことです。ですから価格も若年層に向けたものです。それだけに、どこにどれだけ投資をするべきか。それによって価値観の照準をどこに合わせるのか、ということに神経を使いました。若い人が手に入れやすい──それが125 DUKEの優先した部分です。つまりコストです。

オレブロ とすると、通常のKTMのモデルとは違う苦労があったということですね。
キスカ KTMのエンジニアからは、「特にサスペンション、ブレーキ、フレームは重要なパートだ」というリクエストが来ていました。コストの使い方がセグメントごとに異なります。安くて格好いいだけではダメです。機能的にKTMらしさがなければなりません。
たとえば、良い例がスイングアームです。とても軽く強い構造です。690 DUKE同様アルミ鋳造製で、視覚的に内部のリブが見えるようにデザインしています。まるで普段は見えない裏側を表面に出したかのようなデザインにすることで、特別な印象を作り出しています。
フレームも自動溶接機のロボットアームがトレリスフレームを造り出していいます。これはKTMの上級機種のプロセスと全く同じ行程から造り出されています。品質、時間、コスト──この3つを計りにかけながらもベストに近づけていく。安いから我慢してもらう、それでは後々その人達はKTMから離れてしまいますからね。

1991年以来、KTMのデザインを手がけてきた。バイク好きであるデザイナーが、バイクのデザインをする。だから、魅力的なモーターサイクルが出来上がる。

1991年以来、KTMのデザインを手がけてきた。バイク好きであるデザイナーが、バイクのデザインをする。だから、魅力的なモーターサイクルが出来上がる。

オレブロ ということは、キスカさんとしては125 DUKEのデザインに100%を出し切った、と。
キスカ デザイナーにとって、それは難しい質問です。どのデザイナーも同じだと思いますが、制約の中でベストは尽くしても、もっとああしたい、こうしたい、という部分は必ずあるものです。
ただし、125という既成概念、その次元を越えている、と言いたいですね。きっと満足していただけると思っています。KTMのエンジニアはバイク経験が豊富にあるスタッフが造っています。だから経験のあるライダーとビギナーのでは、印象が異なる場合があるのは事実です。でも、全くのビギナーでも経験を重ねていけば、このバイクの本当の面白さ、価値をより深く味わってもらえるはずです。経験のあるライダーなら文句なく楽しいはずですから。

オレブロ なるほど! さて、125 DUKEの今後はどうなるのでしょうか?
キスカ 125 DUKEはモーターサイクルへの招待状です。
125 DUKEは小排気量の小型バイクですが、KTMのクオリティー、デザインを持ったモーターサイクルです。125だからといって手を抜いたりはしていません。KTMが送り出す大型のストリートバイクと、同じ努力、同じプロセスで造られているのです。
125 DUKEが成功すれば、これから若い人達がもっと親しめるようなプロダクトにより集中して力を入れることが必要でしょう。KTMが同じクオリティー、同じフィーリングのコンパクトモデルを提供すれば、若い人達にとってステップアップするのにも好都合ですしね。
そう、KTMの魅力に感染してもらうためにも、ここは大切なポイントだと考えています。

オレブロ ありがとうございました!