125 DUKE Impression
「ああ、スポーツバイクって楽しい!」
そんな、プレミアム・コンパクトでした。
By 松井 勉(モーターサイクル・ジャーナリスト)

いよいよその日がきた。125 DUKEを初めてじっくり眺め、そして初めて走らせることができる。期待に膨らむ胸。

でもちょっと待てよ。テストの場となる千葉県にある袖ヶ浦フォレストレースウエイといえば、一周2.4キロのショートサーキットながら、ビッグバイクで走っても手応え充分。

コーナーには旋回半径の大きなカーブから小さなカーブへと連続して続く複合コーナーが多く、また、地形を生かしたアップダウンも組み合わさり、進入のタイミングを誤るとラインを外すし、ブレーキングラインが下りだったりと、一筋縄ではいかないテクニカルコースとして記憶している。ボクは勝手に「房総のポルティマオ」(ポルトガルのアルガルベサーキットのこと)」と呼んでいる。

ボク自身の乗る前予測としては「4スト125㏄のストリートバイクにはいくらなんでも荷が重い」というものだった。ま、その分は引き算して評価してあげましょう……と、仏心を持ちながらサーキットへと急ぐ。

この日はメディア向けにKTMの“フルラインナップ試乗会”と銘打って国内で販売されるストリート、オフロードモデルにイッキ乗りできる、という趣向のイベントでもあった。

だから、コース上には125 DUKEだけではなく、690 SMC、990 SMR、990 SM Tなどのスーパーモト軍団、白とオレンジが鮮やかな2011年モデルのRC8 R、2010年モデルのRC8 R、RC8といったKTMスーパーバイク軍団、そして690 DUKE R、990 SUPER DUKE、990 SUPER DUKE RなどのネイキッドバイクのDUKE軍団も同時にコースに放たれている。

その光景を見て仏は知らぬ間にどこかへ消えていた。

本当にこれ、45万円でおつりがくるの?

125 DUKEの試乗時間前にディスプレイ用のバイクをじっくり観察した。通常、125クラスといえば市街地でのコミューター、あるいはビギナー向けのローコスト型。スポーツバイクファン目線で言うと食指が動く対象ではない場合がほとんど。

ところが、この125 DUKEときたら、隣に690DUKE Rが並んでいてもまったくひけをとらない質感を持っている。もちろん、外観だけではない。KTMのストリートバイクに共通するチューブラースペースフレームのパイプはクロームモリブデン鋼を使った物だし、前後のサスペンションはWP製。前後に履くタイヤもラジアルだ。ブレーキ関係も、イタリアのブレンボがインドで立ち上げた現地法人が造るもので、デザイン、技術はブレンボ譲りのバイブレ製。安っぽい部分がない。

そしてKTMらしいデザインランゲージでまとめた外観デザインは、ピンクのナンバーを見なければバイク通でも125とは解らないだろう。それぐらいしっかりとした造り込みがされている。

跨がってみて一番に感じるのはタンクの存在感。大きい。でも、ニーグリップする部分は実にスリム。シートに腰を下ろしても、125クラスのバイクにあるサスペンションのチープな沈み込み感がない。

なるほど、KTMの設計者たちが、「自分たちがバイクにあこがれた頃、欲しい、と思ったのはビッグバイクや質感の高いバイクだった」という思いのたけをぶつけただけのことはある。見ても触れても安いんだからしょうがない、という部分がない。ビッグバイクのような質感だ。

これらの情報は『KTM File #2  Spring 2011』にたっぷりと載っていて、テストまでの時間、じっくり読んで勉強させてもらいました。受け売りです(笑)

ちなみに『KTM File #2  Spring 2011』KTM正規ディーラー、KTM JAPANのWEBサイトからも請求が可能とのこと。これは必見。

個人的にはスイングアームのデザインや、エンジンの左を回って排気チャンバーに導かれるエキゾーストパイプ、フレームからエンジンをつり下げるエンジンハンガーなどの形状など、本当にニクイ設計がされていると感じた。

それにメーターパネルに表示される情報の潤沢さ、ハンドルスイッチが内部に照明を持ち、暗くなってもライダーから視認性が確保される。ということは、並のビッグバイクでも使っていない装備を持っているということ。125 DUKE、すでにこの段階でジャケ買いしそうな自分に気がついたのです。

でも、ジャケ買い失敗談には事欠かないボクの場合、やっぱり走ってきっちり確かめたい。最初に走りの場に選んだのは、サーキットのパドックにある広場にいくつものパイロンを並べ、コースに見立てたエリア。そこに125 DUKEでむかいます。

走り初めてすぐに感じたのは力があるな、ということ。125㏄の4ストロークエンジンなんて1速や2速だけにとどまらず、エンジンをブン回さないと走らない、という感覚があった。物足りなさ遅さで、乗っていても楽しくない感じがあるに違いない、という想定は早くもひっくり返る。125 DUKEが積むインジェクションを備えるDOHC4バルブエンジンは、低い回転数から力がある。シフトアップしてもエンジンが力を出している回転数をキープしてくれる。短い直線でもスピードの乗りがいい。

そして前後のブレーキ。右手で操作するフロントブレーキは指をかけ、力を入れる、そしてブレーキが効き速度が落ちる、という一連が思い通り。右足で操作するリアブレーキも操作性がよく制動力も充分。街中で速度調整やちょっとした旋回時に使うだけにこれはいい。

馴れてきてペースを上げる。車体の造りがしっかりしているところが印象的で、右に左に切り返しながら曲がる狭いルートを本当にスイスイ走る。バイクとの一体感も抜群。ものすごく軽いビッグバイクに乗っているような安心感と楽しさ。

正直、ここまでガッツり走るとは思っても見なかった。

KTMは今バイクに乗っていない若い人にこのバイクでその面白い世界へ、と誘いたいそうだが、バイク歴30年のボクが欲しい。今までの経験を総動員してこのバイクを操るのは本当に楽しい。

本当に良い道具は扱いやすい。そうなると長く愛せるから結果的に経済的、という大工道具の話を聴いたことがある。そんなことを思い出した。

どんどん楽しくなる感覚、いつまでも走りたい歓び。
KTMだ、間違いなくKTMだ。

いよいよサーキットへと125 DUKEへと走り出す。さすがにストレートエンドで160キロ近くに達する990 DUKE、RC8 Rシリーズがガンガン走るコースに切り込むのは勇気がいる。後方からは猛然と近づくその軍団をやり過ごし、加速を始める。

1万回転プラスまでエンジンの回転数を引っ張り、シフトアップ。メーターパネルの上にシフトライトが点滅する。そこまで回転を上げてもエンジンが音を上げることがない。ここでも速度の乗りがよい。

100キロ近くになるとさすがにその上昇は鈍るが、潜在的なポテンシャルはまだあるはず。ヨーロッパでは125㏄のバイクは、免許制度の関係で15馬力以下、速度リミッターを備える場合もある。

それだけに、80キロぐらいまでの加速と速度の乗りの良さを体感すると、それ以上で鈍くなる加速は「絞られている」んだな、と思う。

サーキット用にこの部分をチューンアップしたら一体……。

そんなことを想いながらアクセルを開ける。

3コーナーから下りになり、デジタル表示の速度計は110キロに迫る。下りながら次第に右に回り込み、このサーキットで一番小さいコーナーへと減速をする。あれ、楽勝だった。そこから上り勾配がる直線。それでもじわじわ速度を上げて行く。125のくせにしっかり走る。

そして複合の左をやり過ごす頃にはサーキットという場面でもこの125 DUKEがまったく不安の無いことが確信にかわっていく。再び直線でビッグバイク軍団に抜かれた。この先にはタイトな左、そして右ヘアピンが現れる。直線の勢いをよそにビッグバイクは早めの減速をし、コーナーへの準備を整える。しかし125 DUKEはまだ全開。軽いし、旋回性能がとても高いため、ビッグバイクと同等以上の旋回速度で左コーナーに侵入。彼らの大きなテール周りが視界に迫る。短い直線のあと、右ヘアピン。ここでもグッと前との間隔が詰まる。125がビッグバイクに迫る。これ、痛快じゃないですか?

フレームが本当にしっかりしている。だからハイペースのコーナリングにも不安がない。不安がないともっとアクセルを開けたくなる。アクセルを開けるとバイクの性能をもっと引き出せる。

エンジンの性能をフレームの性能が上回っているからでもあるのだが、巧くバランスしていて、エンジンが物足りないとかつまらない、という風に感じないところが凄い。バランスしているんです。

このロジック、KTMのストリートモデル、オフロードモデルが持っている特徴と同じだ、そう気がついた。

それから30分間の走行時間が終わるまでサーキットで遊び回った。時にビッグバイク軍団を追い回し、長いストレートエンドに向けてアクセルを絞り続け、そしてカーブへのアプローチに挑んだ。他のメディアのライダーが走らせる125 DUKEに追いつき、追い越し、または追い越されたりした。そんなことが楽しくて仕方ない。ああ、バイク乗りで良かった、と思う。と同時に今度は町でこのバイクを走らせてみたいと思った。

走り終わってもう一度、『KTM File #2』を読み返した。その中にあったフレーム設計者のロベルト・プリリンガーが語る「目指したのは価格の安い商品ではなく、KTMらしいモーターサイクルです……」という意味が乗って解った。

とにかく面白い。φ43mmというインナーチューブを持つフロントフォークを普通の125クラスのバイクは使わない。125 DUKEは前後17インチのラジアルタイヤなど、400㏄の中でもトップクラスのバイクと同等の装備を持っている。

だから、これぐらいの走りができても当たり前といえば当たり前なのかもしれない。でも125というパッケージの中でこれを実現させたことは賞賛に値する。

しかもこの125DUKEが45万円でおつりが来る、という事実は驚愕だ。絶対にメーカーにしかできない全体のバランスと、インドで生産することでコストを抑えたKTM設計のバイク。作り手の想いと製品のブレのなさ。走りの確かさ。まだバイクの世界を知らない人に是非乗って欲しい最高に面白いアクティビティーだし、免許を取れる年齢になって欲しいバイクを物色中の人にも是非勧めたい。

でも、一番乗って欲しいのはバイクの経験を持っているライダーだ。バイクを100%使いこなすって? そんなことを忘れかけているビッグバイクライダーにこそ、セカンドバイクとして乗って欲しい一台だ。

目から鱗、なんて表現じゃ足りない。新しい何かがこのバイクに乗ると動き始めるはずだ。

ボクですか? 変わりましたよ。動き始めましたよ。ああ、この手があったか、とね。