NEW RC8R TEST in Valencia 第4回
松井 勉さんに聞く、オレブロ的こぼれ話

バレンシア・サーキットでの試乗会に参加した松井 勉勉さんに、裏舞台のハナシを聞きました。

バレンシア・サーキットでの試乗会に参加した松井 勉さんに、裏舞台のハナシを聞きました。

先日お届けしたバレンシアサーキットのインプレッション 。あいにくの天気にもかかわらず、新型RC8Rはテスターの心を熱くしてくれたようです。今回はそんなメディアローンチの様子から、本編には出てこない、現場のあれこれをお届けします。

オレブロ:バレンシア到着の日は良いお天気だったんですよね。

松井 勉(以下松井):そうなんです。空港からホテルに移動した頃はジャケット着ているのが暑いぐらい。

オレブロ:それが翌日は……。

松井:雨。そういえば2009年にポルトガルであった990SM-Tの試乗テストの朝も雨上がりで道ウエット、その数日前に同じホテルを会場に行われていたRC8Rの試乗日も雨だったとか。

オレブロ:バイクに雨はツライですよね。ところでメディア試乗会の流れをご紹介下さい。

(写真左)まずは技術説明会場前で受付です。資料等を受け取ります。右はこうしたプレスイベントからエルズベルグロデオなどKTMのイベント関係の手配を担当しているエバさん。(写真右)そしてプレゼンテーション会場。プロジェクターで映された資料を交えて、PRマネージャーとR&Dスタッフによる掛け合い式で進められています。

(写真左)まずは技術説明会場前で受付です。資料等を受け取ります。右はこうしたプレスイベントからエルズベルグロデオなどKTMのイベント関係の手配を担当しているエバさん。(写真右)そしてプレゼンテーション会場。プロジェクターで映された資料を交えて、PRマネージャーとR&Dスタッフによる掛け合い式で進められています。

松井:今回のように会場が、メーカーのKTMやメディアにとって国外で行われるケースは、前日に会場となるホテル等に入ります。そこでまず新型機種のコンセプト、変更点あるいは新しい技術的注目点などをメーカーサイドからレクチャーを受ける技術説明会(通称私たちは技説と呼んでいます)が行われます。その後懇親会を兼ねた夕食で初日は終わり→爆睡→時差の関係で未明に起床……がいつもパターンです。今回は技説が試乗スケジュールの前、朝8時から行われました。

(写真左)IDMスーパーバイクに参戦するファクトリーチーム用のトレーラーや、新型RC8Rを乗せたトラックなど、パドックにはオレンジ色のカーゴが並びます。オーストリアからバレンシアまで長い旅をしてきたのです。(写真右)ホイールがはまってないのはおかしいよね、すぐ着けるから、とメカニック氏。有り難うございます。ならば、と2台のワークスマシン、#9と#45の間に新型RC8Rを入れて撮影することに。

(写真左)IDMスーパーバイクに参戦するファクトリーチーム用のトレーラーや、新型RC8Rを乗せたトラックなど、パドックにはオレンジ色のカーゴが並びます。オーストリアからバレンシアまで長い旅をしてきたのです。(写真右)ホイールがはまってないのはおかしいよね、すぐ着けるから、とメカニック氏。有り難うございます。ならば、と2台のワークスマシン、#9と#45の間に新型RC8Rを入れて撮影することに。

(写真左)記念撮影のつもりで写真を撮っていたら……。試乗会取材に参加した八代俊二さんとともに。パドック内のウォールなどは本番のレース同様のもの。さすがファクトリーチーム。

(写真左)記念撮影のつもりで写真を撮っていたら……。(写真右)試乗会取材に参加した八代俊二さんとともに。パドック内のウォールなどは本番のレース同様のもの。さすがファクトリーチーム。

オレブロ:会場のホテルは街中ですか?

松井:今回は市街地から少し離れた場所で、バレンシアの街とサーキットの中間地点的な距離感でした。とあるメーカーの広報担当の人に聞いたことがありますが、ホテル選びもいろいろあって、バイクをフロントロビーに展示できるか、アクセスは良いか、人、物を移動させるのに充分な数のパーキングロットはあるか、試乗現場に近いか、食事は美味しいか、部屋は快適か、インターネット環境はバッチリか、迷わず来られるのか等々あれこれ配慮するそうです。今回はサーキットでしたが、一般道で試乗テストを行う場合、その試乗コースがモデルコンセプトに適しているか、そして撮影に適した場所が確保できるのか、なんてことまで事前に全部チェックするそうですよ。

オレブロ:そして翌日、サーキットは雨……。

松井:そうなんです。残念の一言。でも、それでは取材にならないので、RC8Rの開発に関わった多くのエンジニアに取材します。

そして1時間ぐらいで概ねエンジン、電機系、タイヤサプライヤーなど順繰りでインタビューが採れたので、あとは走った後にもう一度疑問点を、なんて所まできたところで強まる雨……。

(写真左)まずは普通バージョンで対応するステファン・ネーベル。妙にニコニコしているな、と思ったら……。(写真中央)雨の中に出ていってポーズを取ってくれます(笑)。(写真右)そしてレンズが向く以上、かっこいいポーズで応えます。ストレート全開仕様はこんな感じです。

(写真左)まずは普通バージョンで対応するステファン・ネーベル。妙にニコニコしているな、と思ったら……。(写真中央)雨の中に出ていってポーズを取ってくれます(笑)。(写真右)そしてレンズが向く以上、かっこいいポーズで応えます。ストレート全開仕様はこんな感じです。

オレブロ:どうしたんですか?

松井:正直、今日一日こんな雨だったら、ものすごく贅沢な雨天中止になってしまう。でもそれだと原稿が書けないので、何か感じて帰りたい。そこでまずはコースを覚えるつもりで走りました。でも直線でもハイドロプレーニングするような始末。コーナーの写真も全然寝ていませんし、迫力あるシーンが撮れません。

オレブロ:天候に乾杯、いえ完敗ですね……。

松井:今回、サーキットにはIDMスーパーバイク選手権に参戦しているKTMファクトリーチームも参加していました。惜しくもライダータイトルは逃したものの、マニファクチャラータイトルを獲得したチームです。そのパドックでファクトリーバイクとRC8Rを並べて撮影したり。

そして雨男さん(じゃないって!by 松井)も一緒にはじけてます。後ろの人の視線が少々痛いですね(笑)。

そして雨男さん(じゃないって!by 松井)も一緒にはじけてます。後ろの人の視線が少々痛いですね(笑)。

オレブロ:なるほど。

松井:で、そんな撮影をしていたら、ファクトリーライダーのステファン・ネーベルがやってきたんです。だから、一緒に写真を撮りたいと申し入れたところ、僕も着替えた方がいいねと。で、やけにニコニコしていると思ったら水中めがね持ち出して。潜水か! ですよ。

オレブロ:雨の凄さを印象づけますね。

松井:というか、普通、その場にタオルはあっても、水中メガネはないですよ。だれ用意したのこれ!って。大笑いです。「走れるのか? 写真撮れるのか?」という重たい空気のパドックを笑いで一掃してました。

オレブロ:マルティン・バウワーもいましたよね。

松井:彼は終始クールな感じでしたね。晴れていれば彼らのランデブーも見られたんじゃないの、と思うと重ね重ね残念ですね。

オレブロ:雨の中、それでも撮影に出掛けました。

松井:こちらからリクエストを出そうか、というタイミングでKTMのPRマネージャーから、カメラマンがクルマで走りながらバイクの走りを撮る、いわゆる引っ張り撮影の誘いがあったんです。正直、この手しかないかも、という雨の降り方でした。カメラマンがクルマのバックドアを開けて後ろ向きに座り、バイクをローアングルから撮るんです。時々手を伸ばしてバンパーより低い位置でシャッターを切る。カメラがクルマが跳ね上げる水しぶきで濡れないか撮られながら心配になりました。

「KTMのスピリット、濃厚でしたよ」

雨で走れない分、開発者インタビューも快調に進みます。タイヤについてレクチャーをうけているところです。

雨で走れない分、開発者インタビューも快調に進みます。タイヤについてレクチャーをうけているところです。

オレブロ:すでにインプレッションはオレブロでもお届けしましたが、2010年モデルとは違いは明確ですか。

松井:エンジンのキャラクターが違うのが大きなポイントです。一言でいうとますます乗りやすくなった。だから開けるのが恐くない。開ければ駆動力が伝わりますからバイクもコントロールに応えてくれる。だから速く走れて面白い。ならば、もう少しチャレンジしてみようか、とポジティブになれる。これ、KTMのエンデューロバイクに乗ったときにも感じる「ライディングへの良いサイクル」と同じものでした。結果的に楽しく、速く走っている。どのKTMでも共通する美点だと思うんですが、造り手側のスピリットが濃厚に伝わる場面ですね。

オレブロ:特にどのようなユーザーにお勧めでしょうか?

松井:文句なしにファンライディングをしたい人、性能はもちろん、作り手の哲学にも敏感な人、そしてこのデザインで心が動く人に勧めます。

READY TO RACEというKTMのスローガン。その要素となる“パフォーマンス、ピュア、エクストリーム、アドベンチャー”という各論からなるそうですが、造り手の意思がはっきりしている。人生を楽しむためのモーターサイクルにとってこれは本当に大事。性能は高いけれどもツライ、というのは何かが違っているんだと思います。

RC8のコンセプトをさらに熟成した進化版です。ドライのサーキットや、日本仕様の造り込みにも興味ありますね。

開店休業。ピットレーンで待ちぼうけのRC8Rに跨り前のクルマと追っかけ撮影に出掛けます。タイミングが悪く雨は強目、この1ラップだけでレザースーツが2㎏は重くなったとか。

開店休業。ピットレーンで待ちぼうけのRC8Rに跨り前のクルマと追っかけ撮影に出掛けます。タイミングが悪く雨は強目、この1ラップだけでレザースーツが2㎏は重くなったとか。

「最後に、F1ネタのオチ、教えて下さい」byオレブロ

オレブロ:なるほど。色もグロスペイントになりましたし、LEDのランニングライトを装備したり、アイコニックな部分も備えたRC8R。これは楽しみですね。導入時期などあらためてお知らせしたいと思います。ところで、セバスチャン・ベッテルもRC8Rオーナーだ、というお話を以前オレブロでも紹介したのですが、今回の取材でもF1ネタにニアミスをしたとか。そのオチって何ですか?

(写真左)パドックとは別棟になるレストラン棟。一目で分かるナイフとフォークのビッグサインが最高です。バレンシアサーキットは観客席から全域を見渡せるような造りが特徴。遠い場所からでも解るようにという配慮なのでしょう。(写真右)お昼は巨大パエリアパンで造られたパエリア。美味しかった! 今回、バレンシア滞在24時間の間で3回パエリアを頂きました。……で、パエリア話がオチじゃなく、↓をお読みください。

(写真左)パドックとは別棟になるレストラン棟。一目で分かるナイフとフォークのビッグサインが最高です。バレンシアサーキットは観客席から全域を見渡せるような造りが特徴。遠い場所からでも解るようにという配慮なのでしょう。(写真右)お昼は巨大パエリアパンで造られたパエリア。美味しかった! 今回、バレンシア滞在24時間の間で3回パエリアを頂きました。……で、パエリア話がオチじゃなく、↓をお読みください。

松井:それはバレンシアの空港からフランクフルトに向けて飛んだ時のことでした。その飛行機(エア・ベルリンというキャリアでした)にシューマッハが乗っていたんです!

オレブロ:こ、皇帝が!

松井:ミハエルじゃなくてラルフでしたけど……。到着まであと少し、というころ、前のほうの席から颯爽と通路を歩いて後ろに向かって行くラルフ。

オレブロ:トイレですかね。

松井:……。僕の脇を通り抜けるとき、彼の踵がフロアを蹴る振動が伝わってきましたから。

オレブロ:プチ自慢ですね。

松井:F1の現役は退いてはいても、さすがレーシングドライバー。首太かったですよ。で、着陸したらターミナルまで移動するバスだから確認しなきゃ、と思ったら、さすがセレブ。タラップの脇まで黒のポルシェ・パナメーラが迎えに来てました。エアラインか空港のプレミアムサービスのようで、数人の相乗りでしたが、助手席に乗り込んだラルフ、僕を知っていても話しかけないで下さいオーラ出ていましたね。

オレブロ:今度あったら是非オレブロ用にインタビューを!

松井:……。そうそう、その飛行機、着陸体制に入って、ランディングギアがタッチダウン、という頃にいきなり急上昇して着陸やり直ししたんです。で、上空で機長が「只今着陸出来ませんでした」とアナウンス。それは乗っている人みんな解ってるけど、むしろ何故出来なかったの? の説明がなかったから「ひょっとしてナニかの手違い? それとも失敗?」。機内中「エエエエ?」という空気でイッパイになりました。2度目は無事に着陸しましたが(笑)

オレブロ:オチはラルフ・シューマッハだったんですね。

松井:もう一つあるんです。そこからザルツブルグに飛んだんですが、その飛行機がニキ航空。オーストリア人の元F1チャンピオン、ニキ・ラウダが創立したLCCですね。洒落か本気かシルバーの機体に書かれたマスコットがハエ?のマーク。flyniki.comなんてURLも書かれていて、FLYとハエを引っかけたのね、というのは解るんですが、何故ハエ? というのは不思議です。

オーストリアの英雄、ニキ・ラウダもKTMファンだったのです。

オーストリアの英雄、ニキ・ラウダもKTMファンだったのです。

かつてニキ・ラウダはラウダ航空とう航空会社を経営していましたが、それとは別の会社だそうです。LCCですけど、エアバスのシートは革でした。オマケに離陸前に機内に流れる安全設備のアナウンス(非常出口とか必要になると酸素マスクが自動で降りてきます、とか、救命胴衣の装着仕方等のあれです)、ニキ・ラウダ、ご本人の声でした。

オレブロ:実はニキ・ラウダさん、KTMのバイクと一緒に撮影した写真が残っています。

ところで、成田じゃなくてザルツブルグへ……。そのワケは!

その答えは是非、3月に行われる大阪、そして東京のモーターサイクルショーへ! KTM File #1の第二弾、鋭意制作中です。まだKTM File #1をごらんになっていない、という方はお近くのKTMディーラー、もしくはこちら にアクセスナウ。