NEW RC8R TEST in Valencia 第3回
新型RC8R、走りの深みにさらなるコク。
天気が味方?したファーストラン。

旧市街にて。新しいRC8Rは街中でもその持てる特性を充分に見せつけた。

旧市街にて。新しいRC8Rは街中でもその持てる特性を充分に見せつけた。

オレブロをごらんのみなさま、中でも新型RC8Rにご注目をいただいたみなさま、お待たせ致しました。ニューRC8Rのインプレッションをお届けします。

その前に、以前お届けしたRC8R関連のリポート、”バレンシアテストへの道“、”2011年RC8Rのここに注目!” も合わせてごらんいただくことをお薦めいたします。

さらにコチラコチラから始まる、という長〜い前置きも……。

そうなんです。要約すると、クリスマスギフト用のカレンダーから始まり、F1チャンピオンに話しが飛び、でバレンシアへ。そして新型RC8Rのインプレッションの後、再び、F1がらみの小ネタが!

まずは本編、2011年モデル新型RC8Rのテストインプレッションをバレンシアからお届けします! レポートはモータージャーナリストの松井 勉さんです。

何故! どうして!

しかし雨が見せたRC8Rの進化の深み。by 松井 勉

オレブロさん(?)の前説にあるように新型RC8Rのメカニズムなどに関してはコチラ を参照頂くとして、実際、乗ってどうだったのか、に関してお伝えしたいと思います。

走行開始間もなく。雨に濡れる状況ながら早急に信頼関係が構築されていく。

走行開始間もなく。雨に濡れる状況ながら早急に信頼関係が構築されていく。

新型RC8Rのテスト当日の朝、バレンシアのホテルをチェックアウトし、クルマに荷物を積んでいる頃からどことなく雨の匂い。まさか。

そう思いながら15分ほどの距離にあるバレンシアサーキットに向かう車から見る限り、濃淡のある曇空ではあるものの、雨が降るようには思えなかった。しかし、オートルートの出口に向けて車線変更をする頃、フロントウインドウは雨に叩かれ、アスファルトも一気に雨で黒くなる。パドックに着いてクルマを降りると、昨日の汗ばむような陽射しが嘘のように寒い。オイ!

風で流れる雲は相変わらず濃淡があり、あと10分で雨が上がりそうにも見える。でもそれは叶わなかった。むしろ逆で強まるばかりだ。濡れて路面温度の低いサーキット、タイヤは新品。しかも初めてのコース(一応プレステのゲームで練習はしてきましたけど)、そして乗るのは175馬力を生み出すスーパースポーツ。

個人的にバレンシアのコースは、毎度Moto GPでもテンションの高いバトルがある見逃せないコースとして注目していた。それだけに走れることを心底楽しみにしていただけに己の運の悪さを呪うほかない。

だからといってパドックに用意されたテーブルとイスに陣取り、スナックを食べつつ、エンジニア達から開発秘話を聞いているだけではらちがあかない。太陽に照らされれば眩しいに違いない白とオレンジのRC8Rに跨がり、重たい気持ちを鼓舞して決意を固める。

バレンシアの太陽よ! 祈るように天候の回復を待ちながらも、空は暗くなる一方。もっとも雨がひどかった時間帯でのRC8R。水も滴る・・・・・良いバイクです。

バレンシアの太陽よ! 祈るように天候の回復を待ちながらも、空は暗くなる一方。もっとも雨がひどかった時間帯でのRC8R。水も滴る・・・・・良いバイクです。

パッと跨った印象は2010年モデルまでのRC8Rと同様、ステップとハンドルの位置、そしてシート高などを合わせたライディングポジションがフレンドリーで乗り手を威嚇するような部分がない。

走行時間になっても集まった多くのジャーナリスト達は走行を見合わせていた。暖機したエンジンもすっかり冷えている。水温があがるまでクラッチレバーやブレーキレバーの遊びを自分の好みに合わせる。意味もなくミラーを合わせている間も雨は粒の大きさを増していく。

ローにシフトし、クラッチをゆっくりつなぐ。2000rpm程度で滑るように動き出すRC8R。その所作のどこにもギクシャク感がない。まるで上質なツアラーモデルのような走り出しだ。まずはコースを覚えるつもりで最初の走行枠を走ろう。そんな控えめな決心だった僕を、このエンジン特性は大いに勇気づけてくれた。

1コーナーを曲がり終えたあたりにピットアウトレーンは合流。4000~5000rpmを目処に上のギアにつなげてゆく。新品タイヤと雨の路面の組み合わせから疑い目をそらすのは難しかったが、従順でドンツキのないスムーズなエンジン特性が印象的。メカニカル的にも滑らかさが増している。エンジンの変更の具合が手に取るように解った。

バレンシアにやって来る2週間ほど前、2010年モデルのRC8Rでサーキットを走るチャンスがあった。そこでの記憶がさめやらないタイミングだっただけにこれは新鮮。

ブレーキのタッチの良さと制動の立ち上がりのコントロールしやすさに違和感がまったくない。その減速する荷重をサスペンションが初期からスッと受け入れ、しっかりとタイヤを路面に押しつけてくれる。これはWPサスペンションの設定とRC8Rのパッケージングに感謝するほかない。これらの恩恵でガチガチだった心は2ラップ目には速くもほぐれはじめた。

3ラップ目に入るホームストレートからは「直線なら全開でいける」と蛮勇が確信へと変わっていく。奥に行くほどタイトな複合の左最終コーナーから立ち上がり、3速でやおらスロットルを全開にしてタンクに伏せる。ホームストレートはピットウォール寄りのほうが水たまりが少なそうだ。

結果的に新型RC8Rの旨味を確かめるのには貴重な体験となった。

結果的に新型RC8Rの旨味を確かめるのには貴重な体験となった。

フラットトルクのエンジンは過激な面がなく、実にリラックスできる。しかしその速度の乗りは速く凄い。4速にシフトアップして全開にした直後、メーターにある赤いフラッシュが盛大に点滅する。直立状態でさえ後輪はホイルスピンを始めたのだ。様子見程度のペースで走っていたタイヤが温まる訳もなく、僅かなギャップで荷重が抜けた瞬間にそれは起こったのだ。

だからといってアクセルを緩める気になれない。その後もシート後部に加重してアクセル全開。あっという間に速度は240キロ以上に到達。200メートル看板のはるか手前から身体を起こし、減速を開始。前輪への荷重移動を適度な速度に変換してくれるサスペンションの助けもあって、ダンロップ製のスポーツスマートは想像以上のグリップ力を感じさせてくれる。スリッパークラッチを介さないミッションながら、エンジン特性の恩恵もあって、シフトダウンで後輪がグリップを失う事は無かった。これも大きな安心材料だった。

トラクションコントロールも、スリッパークラッチもABSもない。最近のスーパースポーツの装備になれた頭と身体は、それでも急速にリラックスし始めていた。

こうして1枠目の走行は終了。その後さらに雨が強まり、午後の天候回復に賭けることにする。

ストリートでの乗りやすさも実感。

空を睨みながら過ごすパドック。時計は速くもランチブレークの時を告げていた。その後、午後の走行枠に入る前にKTMのスタッフはRC8Rで市街地へのショートランへと連れ出してくれた。往復40分ほど。サーキットを出て、短い区間をオートルートで移動。サーキットに近い旧市街へと、ジャーナリスト軍団はマスツーリングをしたカタチだ。雨はほとんど上がったがまだ路面は濡れている。

安心してコーナーへのアプローチ出来ること。リラックスした気分になれたことこそ、完成度の高さだと感じた。

安心してコーナーへアプローチ出来ること。リラックスした気分になれたことこそ、完成度の高さだと感じた。

市街地スピードで感じたのは乗り心地の良さだった。硬さ、荒さがない。市街地といっても、対面通行の道では80~100キロで流れるのがヨーロッパ流だから、こんなものかと思った。しかしその後、旧市街の細く荒れた路面を40キロ以下で走った時、その印象が確かなものだと実感。標準で履くダンロップのスポーツスマートがギャップを上手く吸収し、タイヤが路面をしっかり捉えている感じが伝わってくる。

また、路地レベルの狭い曲がり角やT字路で光ったのがエンジン特性の良さだ。本当にこれ、スーパースポーツ? と聞きたくなるほど従順。低回転域から扱いやすい。雨とはいえ全開パフォーマンスを体感した後だけに嬉しいギャップに頬がゆるむ。2010年モデルのRC8Rよりも1速高いギアを楽に街中で使えるのだ。

短時間ながらストリートでの高い素質を見せたRC8R。バイクとしての資質は、全開領域もさることながら日常域、低速移動時のほうが露呈しやすい。その点でこの新しいRC8RがKTMのスタッフが言うとおりまさに「ネクスト・ステップ」だ。この段階でトラックパフォーマンスに未知数な領域を残しながらも、RC8Rを高く評価できると確信した。

セミウエットでも攻めたくてしょうがない!

午後2時。サーキットを覆っていた雲が割れ青空が覗きはじめる。昨日出会ったバレンシアの太陽が照らし続ければ……。

午前中覚えたコースも、セミウエットまで回復した時間帯に乗るとまた別の表情を見せる。レコードライン上のみ乾いてきているが、傾きはじめた太陽が路面を光らせ、濡れているのか斜光のせいで路面の照り返しなのか判別が着きにくい状況となってきた。通過するごとにミラーで路面を確認しつつ、次のラップで探るようにリーンを深めていく。

晴れていたら、こんな感じ……です。

晴れていたら、こんな感じ……です。

ブレーキを残しながらでもRC8Rはナチュラルな旋回性を見せコーナーを切り取りはじめる。リーン速度をゆっくりしたいこんな路面でも、思い通りに走らせることができる。グリップ力任せにアクセルをグワッと開けることが出来ないため、ゆっくりと開けていくことになるが、それでもストレスが溜まる感じがない。これは嬉しい。

ライダーとバイクのコンタクトも従来通り。タンクはブレーキング時に意識してニーグリップしてやる必要があるものの、むしろブレーキをリリースして腰を落とした時にバイクと自分の一体感は上質。RC8Rをコンパクトに感じさせるし、クリップからアクセルを開けてゆく時、少々ヌルっとこようが、身体を動かしやすく「なんとかなるだろう」という自信が湧いてくる。

車体の剛性感も絶妙で、タイヤのグリップだけに頼っているような危なっかしさがない。こんなコンディションなのに、トラクションコントロールを持たないスーパーバイクを操れたのは、エンジン特性、シャーシコンセプトの総力戦だと思う。でも、それをライダーに「乗せてあげてる」と冷たくあしらわず、綺麗にコーチングしてくれる印象は乗っていて気持ちがよい。

ある意味やっかいなコンディションながらこうしてポジティブになれたのは、僕の職業意識によるものより、RC8Rのキャラクターによるところが大きかった。アクセル開度によってエンジンはものすごくパワフルにもなるが、フラットなトルク特性のエンジンはアクセルを開けたくさせるし、ブレーキングを残しながらのクリップへのアプローチも自分のコントロールの緻密さが増したかのような気分の良さで包んでくれる。これらはRC8シリーズが登場して以来、受け継がれる部分だが、その細やかさがいちだんと深くなった。

とにかくトライをし続けようと思えたことこそ、新型RC8Rの真骨頂。ストレートで270キロ超まで引っ張ったあとなど、1コーナーに向けてのブレーキング時に声が出そうだったが、クリップまで自信を持って速度をコントロールできたし、最終コーナーへと続く長い左コーナーはウエットパッチを通るたびに車体がジリジリ外に滑るのが解っても、その後のリアクションがスムーズなだけに、その状況を楽しんでしまったり……。

最後にはせっかく大西洋を越えてここまで来たんだ、とことんサーキットと新しいバイクをしゃぶりつくしてやろう、という欲望が先に立つ始末。空港に向かう直前まで走り続けた僕に、一緒のクルマで空港に向かうドイツのジャーナリストから「時間がないんだ、早くしてくれ!」と半マジで怒られたほど。どれほどこのバイクが楽しかったかお解り頂けると思う(空港に向かうミニバンに飛び乗った時、レザースーツを詰め込んだバッグのファスナーも閉められなかったほど)。

最初、気分に重くのしかかった雨は、むしろRC8Rの良さを濃縮して楽しませてくれたというほうが正しい。チャンスを見つけてドライのもてぎなどで是非あらためて走り回りたいところだ。一言でいえば「ああ、面白かった」というのが何にも勝る僕の感想なのである。(松井 勉)

松井 勉さん、ありがとうございました。次回はF1ネタに繋がる小ネタを含め、試乗会の模様をお届けします!

ニューRC8-Rを、お楽しみください。

ニューRC8-Rを、お楽しみください。