「ワークスマシンに魔法のパーツは使っていません」
by ウインフリード・キアシャーゲル 第1回

外光がそのままガラスのパーテーションを通して廊下にまで届くオフィスの中でウインフリード・キアシャーゲルはキーボードを叩き、時折手を止めて電話の 応対をしていた。WPサスペンションのマネージャーとしての仕事はもとより、長く携わってきたKTMのレースマネージャーも兼ねるキアシャーゲルのオフィ スは、KTMがOEM採用するWPサスペンションの社屋の中にあった。さあ、何から話そうか、と両方の長腕を一度開きそれを閉じ、大きな手のひらでポンと 音をたてた。
「WPサスペンションの創業の地、オランダからここに機能の移し、すでに90%がKTMの本社からほど近いこの場所に移管を終えています。しかし、全部を こちらに移動させようとは考えていません。それは品質にも大きく関わっています。すでに信頼のある現地のパーツサプライヤーを中心に部品の調達をしていま す。オランダからオーストリアに移動したことで、ネガティブなことが起こらないようにすること。

これが一番です。それにベネルクスではオフロードスポーツが盛んで、優秀な技術者と優秀なパーツサプライヤーが揃っています。今でもKTMのファクトリー 用リアサスペンションの生産はオランダで行っています。ですから全てを3000キロ離れたオーストリアに移すことは、働く人、その家族、文化や言葉の違い も考えれば得策ではありません。移動しながら、過去よりも確実に品質を上げる事に成功しています。
ワークスマシンと市販のKTMのサスペンションは何処が違うのか。時々そんな質問を受けます。例えばフロントフォークです。ファクトリー用インナー チューブはφ52mm、市販のKTMはφ48mmのものを使っています。そして内部パーツに関しては、ファクトリー用の部品は、レース毎にメンテナンスを する、あるいは交換をすることを前提にしたものを使います。市販モデルではメンテナンスの要求度を低くしています。現在のところ、両者の違いは2%。そう です。98%は同じなのです。なにを隠そう、どこにも魔法の部品は使っていないのです。これは市販のKTMにとって大きな魅力と強みであり、レースチーム にっとてはコストダウンを意味します。ですから究極の場面でレースをする国際ライダーに向けたより高価で高性能バージョンも用意しています。しかし、すで にハイスタンダードなWPサスペンションを使うKTMの場合、高性能なサスペンションに交換に迫られることはまずないでしょう。これが事実です」(続く)